通信販売の支払い方法として定着した「代金引き換え決済」(代引き)が20年目の危機を迎えている。

 販売者に代わって宅配業者が商品と引き換えに購入者から集金する代引きサービスは、通販市場とともに成長し、20年間で年間決済金額3兆円規模に拡大した。ここに今、法規制の網がかかろうとしている。

 金融庁の審議会は、銀行以外の業種に決済サービスを認める法整備の議論を進めており、早ければ年内に結論をまとめて来年の通常国会へ法案を提出する。

 資金を移動させる「為替取引」は現在、銀行法の下で銀行のみに認められ、金融庁いわく、銀行以外の事業者は“グレーゾーン”。電子マネーなど“グレー”の市場がふくらむなか、いよいよ監督下に置こうと動き出し、代引きも俎上に載せられているのだ。

 「とんでもない規制強化だ」と宅配業界は猛反対。悪徳業者の参入防止を名目として事業届出制が導入されれば、金融庁の検査・監督対象として、査察対応や報告書類作成など事務量が増大する。

 消費者保護の名目で、預かった代金の一定割合を供託金や銀行保証で資金保全することになれば、多額のコストを背負う。

 「規制対応のコストによって競争原資が減り、消費者サービスの低下につながる」とヤマト運輸グループの芝崎健一・ヤマトフィナンシャル社長。業界団体上層部は「コストを負担し切れない中小業者はサービス停止に追い込まれる」と悲鳴を上げる。

 一方で功もある。「運送事業者が販売者に代金を支払う前に倒産した場合、消費者は販売者から二重請求を受けるが、運送事業者が発行する現行の領収証は二重請求に対抗できない」という金融庁の指摘を受け、業界は対抗策としてより近代的な自主ルールを整備し始めた。

 業界案として、10月上旬に代金受領は「代理受領」であることを契約書に明文化するルールを打ち出し、これにより領収書の有効性を裏づけるのだ。

 コスト増に伴う代引きの値上げが現実となれば、代引きに頼る通販市場も打撃を受けるのは必至。「官製不況」とならない道筋が求められる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美 )