激しいカーチェイスのシーンに合わせて、座席が前後左右、上下にも揺れる。劇場中を、本物の風や煙が吹き荒れる──。そんな「4DX」という最新の体感型上映システムを導入する映画館が増えている。
映画館や天然温泉など複合娯楽施設を展開するコロナワールド(愛知県小牧市)では、2013年春から全国5カ所のスクリーンで4DXを導入した。
その結果、映画館部門(飲食なども含む)の売上高は1.5倍に伸び、14年春公開の「アメイジング・スパイダーマン2」に至っては、興行収入の全国1位と2位を、4DX導入館(名古屋市と広島県福山市)が獲得。「地方の郊外型映画館による快挙」と映画関係者の間でも評判になったほどだ。
国内の映画市場を見てみると、1990年代には1700に落ち込んだ映画館数(スクリーン数)は、シネマコンプレックスの台頭で現在は3300にまで増えている。しかし一方で、興行収入はこの10年間、2000億円前後でほぼ横ばい、入場者数も1億5000万~1億7000万人の間で推移している。つまり、限られたパイを映画館同士で奪い合っている状況だ。
加えて、映画館関係者が危惧するのが、公開後あまり時間を空けずにDVD化されたり、インターネットで鑑賞できたりといった具合に映画を見る選択肢が増えていること。大作であればなおさらだ。
こうした背景から、「実際に足を運んでもらえるよう、各社は、劇場でしか味わえない映画の魅力を提供することを模索していた」(映画館関係者)というのだ。