会長の不適切発言や職員の不祥事などで、話題に上ることが多かったNHK(日本放送協会)。だが最近では、朝ドラや情報番組などが視聴者から大きな支持を受け、その「番組力」に改めて注目が集まっている。長引く不況や若者のテレビ離れもあり、経費節減の嵐の中で視聴率競争にしのぎを削るテレビ業界の中で、NHKが視聴者の心をつかみ始めた背景には、何があるのか。その「番組力」に焦点を当て、民放と比べた場合の彼らの強みを、中立的な視点から分析してみよう。(取材・文/池田園子、編集協力/プレスラボ)
世間から厳しい声を浴びせられる一方
最近際立って来たNHKの「番組力」
籾井勝人氏がNHK(日本放送協会)会長に就任したのは、今年1月のこと。その後NHKは幾度となく、残念なニュースで耳目を集めてきた。会長就任会見における籾井氏の「(従軍慰安婦は)どこの国にもあった」発言は国内外で波紋を呼び、理事に辞表の提出を求めていたことも批判の対象となった。
この一連の出来事に対し、NHKの元職員が今夏、経営委員会に対して「籾井勝人会長の辞任および罷免」を求めるなど、異例とも言えるアクションをとったことも話題を集めた。
会長だけではなく、NHK職員も数々の問題を報じられている。11月には女性記者が、社用携帯電話の紛失をカモフラージュするために虚偽の110番通報を行ったほか、男性職員が道路交通法違反の疑いで現行犯逮捕されている。12月に入ってからは、男性職員が出会い系サイトで知り合った少女から現金を盗み窃盗容疑で逮捕されるなど、不祥事が相次いでいる。
言うまでもなく、NHKは国民が支払う受信料で成り立っている。そのため、何か不祥事が報道される度に、民放各局以上に世間の厳しい批判を浴びる傾向がある。「国民から受信料を取っているのに、この体たらくは何事か」といった具合だ。ある意味気の毒でもあるが、「みなさまのNHK」というキャッチフレーズが、彼らを揶揄するニュアンスで使われてきた側面もあった。
しかし、足もとではNHKを評価する視聴者の声が増えてきた観がある。それは彼らの「番組力」についてだ。
よい例が、社会現象となった『あまちゃん』以降、『ごちそうさん』『花子とアン』など、勢いが止まらないNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)だろう。9月29日からスタートした、ニッカウヰスキー創業者で「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝とスコットランド人の妻リタの実話に基づいた物語『マッサン』も、高視聴率を維持している。関西地区での初回平均視聴率が、過去10年間で最高となる19.8%を記録したほか、第7週(11月10日~15日放送)までの週間平均視聴率は20%を超えていた。