他方、インフレで過去の累積債務の実質価値が小さくなる点で、国家財政は得をする。国家財政は国民全体の持ち物だと言ってもいいが、あえて損得の差を述べるなら、将来の納税者が得をすると言っていいだろう。

 調整インフレが行われた場合、一般論として現金や預金の保有は「不利」だ。利回りが固定された長期債の保有は「悲惨」だ。株式は債券よりも「マシ」だ。

 ただし、株式がインフレヘッジとして機能する上で、たとえば2013年、2014年のような金融緩和の前半期の株価上昇が、将来のインフレを相当程度カバーすることの貢献が大きい。金融引き締めが視野に入ってくるインフレの後期にあって、株式は必ずしも有利だとは言えない場合があるので、注意が必要だ。

 不動産も、おおむね株式に準ずる性質を持つはずだ。外貨資産が有利かどうかは、外国側の事情に大きく依存するが、一般論としてリスクに見合った追加リターンを得られるとは期待しにくい。

「老後不安」と並ぶ二大商材
インフレ対策商品にご用心

 実は、「インフレ対策」は金融・運用業界にとって、「老後不安」と並ぶ二大有力商材の1つだ。

 今後、インフレ対策の必要性で顧客を脅して、手数料の高い運用商品を売りつけるセールスが強化される可能性がある。本稿では、具体的な対策まで踏み込まないが、一般論としてのインフレ対策の重要性は認めつつも、インフレ対策を理由にセールされる運用商品・サービスの大半が、商品自体として買わない方がいいと考えられるものだ。

 読者におかれては、インフレ対策に浮き足立って、十分理解できていない運用商品を慌てて購入することのないように、ご注意を申し上げたい。手数料だけで、インフレ以上に損をすることになりかねないからだ。

 もちろん、将来のリスク要因として、インフレが「マイルド」なものにコントロールし切れないリスクもある。ただしそのリスクに怯えて、現在インフレ対策に無駄なコストや過大なリスクを費やさないことが肝心だ。