週刊ダイヤモンド 日本人は生きていない──養老孟司さんは、日本人の課題を、外国人の著書から引用して、こう指摘します。

 精神科医の香山リカさんとの対談が掲載されている今号は、年末好例の「来年(2008年)の総予測」。超豪華メンバーのラインアップです。対談テーマは、「劣化した日本人をいかに治すか」。香山さんは、最近スピリチュアルにはまる人や前世、守護神を語る人が多いなど、ご自身の臨床経験から今日の若者の現状を語ります。

 悩める人向けに、養老さんが提示した一つの回答は、「人生の意味は、自分の中にはない」。ナチスのユダヤ人強制収用所に送られた経験などを元に『夜と霧』を著したフランクルの言葉です。養老・香山ワールドを、是非、ご堪能ください。

 つい先日ご自身のブログで、19回目の断筆を宣言した内田樹さん(『村上春樹にご用心』、『下流志向』などの著者)には、断筆直前ギリギリセーフで、「若者論」を著して頂きました。「若者を、成熟した大人に成長させる方法」についてです。

 経済・経営論の論客、大前研一さんは、「アメリカ発の世界恐慌」の危険性を指摘します。アメリカがこけると、同国への輸出で儲ける中国がおかしくなる。すると、中国需要で収益を上げている日本も打撃を受ける……と論じます。

 ビジネス界では、京セラ名誉会長の稲盛和夫さんと、ワタミ社長の渡邉美樹さんにインタビュー。稲盛さんは「成果主義は、金銭欲を刺激して人を動かそうとする卑しい施策」として、導入に反対。渡邉さんは「教育、福祉、農業などでの改革が後退しつつある」ことに警告を鳴らします。

 政治では、元経済企画庁長官の田中秀征さんが、今後の政局を大胆予測。「解散・総選挙で、政界ガラガラポン」だそうです。

 日本が抱える深刻な課題──少子高齢化と地域格差については、前鳥取県知事の片山善博さんに、具体的な解決策を聞きました。

 そして、2008年の日本の最大イベント、G8洞爺湖サミットでのリーダーシップについては、衆議院議員の小池百合子さんに聞きました。いよいよ突入する京都議定書の第1回約束期間と、ポスト京都論議。「地球環境問題とエネルギーを軸に世界が転換する」と小池さんは予測します。

 北京オリンピックでの星野ジャパンや反町サッカーの戦力分析、注目の映画・演劇・音楽、ゲームや家電業界の行方など、楽しい予測も満載です。

 総予測特集とは別に、作家の高杉良さんとジャーナリストの東谷暁さんには、「日本再生への処方箋」を論じて頂きました。いろいろな分野で発覚した偽装事件などモラル崩壊の日本社会に対して、厳しいご意見と再生へのメッセージを送って頂きました。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 大坪 亮)