「ちょいワルおやじになる前に、ちょいモレおやじになっちゃった」。50の坂を越したばかりの友人が少々自嘲気味にこう言いました。苦笑いを浮かべていますが、ため息の重さから察すると、けっこう事態は深刻ようです。
ちょいモレ とは、有り体に言えば尿漏れのこと。尿失禁という言い方をする場合もありますが、友人の場合は前立腺肥大から来ていたようです。
前立腺は精液の主要成分となる前立腺液を分泌する器官。尿道を取り巻くように位置しており、もちろん男性にしかありません。中年以降は加齢とともにこの前立腺が徐々に肥大する傾向が強くなってきます。その結果、尿道や膀胱の出口を圧迫。尿の出や切れが悪くなったり、頻尿や残尿感が激しくなるなどの排尿障害が現れてくるのです。
切れが悪いためにオシッコが出きらない。そのため、用を足した後に残ったオシッコがもれ出てきて、下着やズボンを汚してしまいがちです。「その気持ち悪さ、情けなさといったら…」と友人は大いに慨嘆しますが、同じような屈託を抱えている諸氏も多いのではないでしょうか。
前立腺肥大の治療には薬物療法と手術があり、最近は内視鏡で前立腺を切除するTURPや前立腺をレーザーで凝固させるILCなどの手術法が注目を集めています。
ただ、中には薬はイヤ、手術はもっとイヤという方も少なくありません。くだんの友人もそうでした。そこで彼が選んだ対策は健康雑誌で目にした腰割体操。お相撲さんが稽古で必ず行う準備運動のようなもので、臀筋など股関節周りの筋肉を鍛える効果が高いことで知られています。
それがよかったのかどうか。毎日繰り返しつづけていたところ、2ヵ月ほどでちょいモレはすっかり収まったと言います。やり方は背筋をできるだけ伸ばしたまま、膝が直角になるくらいまで腰を落とす。この時、膝頭と足のつま先が一直線上にそろうようにします。病院嫌いのちょいモレおやじには、一度試してみる価値はありそうです。
竹内有三(医療ジャーナリスト)