世界最大のスマートフォン市場の中国で、需要が減速し在庫が急速に膨らみ始めた。攻め込んだシャープとソニーは、通期で大幅な最終赤字を計上する見通しで、事業の軌道修正を余儀なくされている。中国で負ったやけどは、想像以上に深い。
「非常に大きな責任を感じている」。業績発表の席上で、シャープの高橋興三社長は、そう言って唇をかんだ。
稼ぎ頭のスマートフォン向け液晶パネル事業で、利益が想定以上に急減したことで、2014年度の連結最終損益が黒字予想から一転して、300億円の赤字見通しになったからだ。
シャープの再建を託され、社長に就任してからわずか2年で、突き付けられた経営の大幅な軌道修正。記者会見の場では「業績回復に向けて、抜本的な構造改革を踏まえた新たな中期経営計画を策定する」(高橋社長)として理解を求めたが、実は今、その内容をめぐって取引先から新たな怒りを買っている。
なぜか。それは、「抜本的構造改革の推進」として示した資料に、液晶パネルの文字が一切なかったからだ。書かれていたのは主に、テレビや太陽光などエネルギー事業の見直しと、固定費の削減策だけだった。
「シャープの最大の課題は、大黒柱の液晶パネル事業で、激しいボラティリティ(変動)を管理するすべと耐え得る十分な体力がまだないこと。はっきり言ってこれに尽きるんですよ。違いますか」
高橋社長を側面支援してきた一蓮托生の取引先だ。“味方”の不興を買った代償の大きさを、シャープは5月にまとめる新中計の策定を通じて、今後痛感するときが必ず来るはずだ。