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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ロケットを3回爆発させても
経営理念をあきらめない強さを学べ

――「MITスマーテストカンパニー50」を見て思うこと

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第9回】 2015年2月19日
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ケータイのメーカーが
儲からない理由とは

 このほか、青色LEDメーカーのクリーの創業者も親交のある人物の1人です。青色LEDといえば、「今世紀中には不可能」とまで言われていた基本技術を開発したのは日本人。それなのに、事業化においては世界にリードされてしまっています。本当に残念ですね。

 クアルコムは、モバイル機器向けチップを開発する世界最大のコンピュータチップメーカーです。ケータイのメーカーがなぜ儲からないかというと、ここに高いライセンスフィーを払っているからです。この会社はモノをつくりません。アイデアを売るビジネスですから、あらゆるモノに自社技術の携帯チップを入れようと血眼になって探しています。

 カグル(Kaggle)は、私の友人が始めた会社ですが、9万人の分析者(データサイエンティスト)にビッグデータの分析を依頼できる知のネットワークを持っているのが強み。コンピュータではまだ難しい、ゲノム解析など大量の計算を分担して行うことで、問題解決のヒントを導き出しています。

 量子コンピュータのD-ウェイブ・システムズ(D-Wave Systems)は、物理学者のたまり場ともいえる企業です。通信が盗聴されたことを教える暗号の開発や、量子コンピュータ技術を実用化していて、グーグルやNASA(アメリカ航空宇宙局)がすでに購入しています。

成功企業の共通項は
「ラージ・オープン・ネットワーク」

 さて、話を冒頭の、なぜ日本から「MITスマーテストカンパニー50社」に選ばれる企業が生まれないかということに戻しましょう。

 成功している企業に共通しているのは、自分のネットワークを、外部のネットワークといかにつなぐかということに経営者が長けている点です。自社と関係ない分野の人とのつながりがアイデアを生む刺激になっているのです。

 つまり、「ラージ・オープン・ネットワーク」が「1+1=2」でなく、「3」以上にする原動力になっているということです。

 日本はこの逆で、「スモール・クローズド・ネットワーク」の企業が多いように思えます。たとえば、IT業界の人はIT業界の人としか付き合いがないといった具合。あなたの会社やあなた自身はどうでしょうか。

 もちろん、外部のネットワークの知見がすべて正しいというわけではありません。エラーを見抜く力も必要です。

 ただ、外部ネットワークを使う利点は、競合他社に知られることなく、他業界で新しいアイデアをテストできるということ。成功している企業の特許出願を見てみると、他業界の分野の商品・サービスの出願数が比較的多い。グーグルもそうです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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