
トライアルホールディングス(HD)は創業以来25期連続増収を成し遂げ、2525年7月には西友を約3800億円で買収し、関東でコンビニ業態「トライアルGO」出店の足掛かりを得た。しかし、トライアルHDの収益性からすれば、西友は高値つかみだったといえる。その代償と抱え込んだリスクは、身の丈に合っているのだろうか。特集『揺らぐコンビニ3強 トライアルGOの衝撃』#4で、検証した。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
西友買収で大手小売りへ仲間入り
抱え込んだリスクは身の丈?
「トライアルにとって、西友は何がなんでも欲しい会社だった」。トライアルホールディングス(HD)の関係者はこう話す。
2025年3月、トライアルHDは米投資ファンドKKR傘下で経営改善に取り組んできた総合スーパー、西友を買収すると発表。三菱UFJ銀行から3674億円を借り入れ、総額約3800億円で7月に子会社化した。
当初、小売業界関係者の間では、買い手はイオンか、ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」や総合スーパーの「ユニー」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスだとみられていた。トライアルHDがその2社を押しのけて買い手に躍り出たことは、小売業界関係者にとってサプライズだった。
トライアルHDの連結売上高は、西友との合算で1兆2873億円となり、上場小売企業の中でヤマダホールディングスに次ぐ規模に成長。九州のディスカウントストアから全国で店舗展開する大手小売企業へ躍進したことを印象付けた。
一方、トライアルHDにとっては、西友買収は絶対に逃すことができないディールだった。同社が九州で開発していた新たなコンビニ業態「トライアルGO」を東京都内で出店するための前線基地が必要だったからだ。
トライアルGOは、既存のトライアル店舗を母店とし、その周辺に出店して弁当・総菜を配送する「サテライト出店」戦略を進めており、それが確立しつつあった。西友は都内各地に店舗があり、東京で出店する際の母店としての利用価値があったのだ。
こうしてトライアルHDは前線基地を得て、11月からトライアルGOを都内で2店舗オープンさせる。セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ3強に、真正面から戦いを挑むことになる。
ただし、西友を買収したことで、トライアルHDはリスクを抱え込んだ。足元では人件費や原材料費などのコストが上昇して、ただでさえ収益を圧迫する状況だ。そんな中で、今後20年間かけて償却するのれんなど、追加のコスト負担がのしかかる。それに、そもそも西友は「収益貢献するには時間がかかる」と、小売業界関係者が口をそろえる状況だからだ。
西友を抱え込んだリスクは、トライアルHDにとって身の丈に合ったものなのだろうか。次ページで検証した。