おしゃれな干物屋に入ると
洋楽が流れてきた……

美しいガラスケースに干物のサンプルが並ぶ。ちなみにこちらの写真も俊成さん撮影

 茨城県ひたちなか市。「サスニンベン」は常磐線勝田駅から歩いて約5分の場所に位置する。「ひもの」ののれんが下がったお店に一歩足を踏み入れると、いきなり衝撃を受ける。

 木の温もりをいかしつつもモダンにまとめられた店内には干物のサンプルが収められた美しいガラスケース。スタイリッシュな家具でまとめられたカフェ風のスペース。天井から釣り下げられたモダンな間接照明。壁にはアイアンでできた「サスニンベン」のロゴ。店内に流れるBGMは「洋楽」である。

 どこからどうみても、スタイリッシュな雑貨を扱う「セレクトショップ」か「カフェ」か「バー」か「高級スイーツ路面店」か「ギャラリー」かと見まがうほどの店内。干物の「ひ」の字も感じさせない空間だ。

「ちょっと変わった干物屋です」と笑うのは代表の磯崎威志(たかし)さん。サスニンベンは威志さん、奥さまの登久子さん、そして次男の俊成さんのご家族で営んでいる。

 干物といえば、海の幸が楽しめる港町のお土産の定番だ。そもそもサスニンベンのある勝田駅周辺は海から離れた位置にある。「磯の香」感ゼロのロケーションである。

「みなさん、海沿いの町で“気分”で干物を買いますよねえ(笑)」。はい。そのとおりです。しかし、威志さんはキッパリこう続けた。「うちの店は、借景には一切、頼ってませんから」。

実は創業100年超の老舗
世界中の魚が珠玉の干物に

カフェ風のスペースは、訪れたお客さんにゆっくり過ごしてもらうための空間

 サスニンベンはビジュアルだけの「ステキ干物店」ではない。確固たる歴史とバックボーンがある。創業1905年。商港として古くより栄えた那珂湊に店を構え、100年以上の歴史を持ち、那珂湊界隈でその名を知らない人はいないほどの老舗。その3代目が威志さんだ。

「子どものころから魚まみれでした」と語る威志さん。昭和30年代、那珂湊の浜に揚がった大量の魚はあふれんばかりに牛車に積み込まれ加工場に届いた。「遊び場は魚の山(笑)。イカを井戸水で洗って食べ、雑魚を拾って遊び、魚の身体のすみずみまで食べ尽くしていましたね」。子どものころから見て、触って、食べてを繰り返し、美味しい魚とそうでない魚は身体に自然と叩き込まれてきた。