こんにちは鈴木寛です。
まずはご報告から。すでに各所で報道されておりますが、この度、内閣から文部科学大臣補佐官を拝命いたしました。皆様からのご期待をかみしめております。大学入試改革を始め、日本の教育が真の21世紀型に生まれ変わるため全力を尽くす所存です。
大学のクロスアポイントメント(兼任教授)、日本サッカー協会の理事は継続します。そういう意味では一人四役。政治家時代よりもスケジュールがひっ迫して執筆時間の確保に悩みますが、ダイヤモンド・オンラインの連載は多くの方にお読みいただき、教育関係者を始め、私の行く先々で感想をいただいて大変励みになっています。引き続き、よろしくお願いします。
大衆の心をとらえたピケティ
再び高まる格差拡大への不満
Photo:milatas-Fotolia.com
さて、年末から忙殺される中でもなんとか時間をやりくりして読み切った本があります。
フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」。本国フランスではそれほどのブームではありませんでしたが、ご承知の通り、アメリカでは50万部を超える超ベストセラーとなり、さる12月に日本語版が出ました。
アメリカで売れた背景としては、スーパー経営者の出現で上位1%の階層が総所得の2割、上位10%で半分を占める「理不尽」な格差に対し、問題意識を持つ人が多かったとみられています。しかも、「r>g」(資本収益率>経済成長率)の不等式に問題を集約させ、資本家と労働者の格差が広がっているとの主張はシンプルでわかりやすい。
皆が漠然と感じていた資本主義システムの矛盾、すなわち労働者が汗水を流して稼ぐ所得よりも、お金持ちが資産を元手に増やす収益の方が大きく、稼ぐ労苦も大してかけていない――と思っていたことをピタリと言い当てたと感じたのでしょう。
「ピケティ氏のマーケティングがうまい」といった批判的な声もありますが、これだけ大衆の心をとらえたのは、約200年分の膨大な各国税務データを分析し、格差への問題を提起したピケティ氏自身の真摯な努力があったからだと思います。
日本でも、すでに十数万部の売れ行きを見せ、日本の専門家による入門書の中には10万部に届く勢いの本も出ています。先日はピケティ氏が問題にする格差が国会でも取り上げられ、それがまた新聞記事となるなど高い関心を集めています。6000円近くと高価にして幅4cmの分厚い本がこれほどのベストセラーになるのは記憶にありません。米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授のような一大ブームになっています。1月下旬にはピケティ氏本人が来日し、講演やマスコミ各社のインタビューに応じていました。