本稿では、燃料電池車の普及に向けた大きな課題について、「水素先端世界フォーラム2015」での発表資料を基に検証する。なお、本稿で掲載する講演スライドについては、同フォーラムの主催者から取材目的での撮影許可をいただいている。

標準(スタンダード)と基準(レギュレーション)
先読みできないアメリカの今後の動き

 最初に、結論から言おう。

 現在の状況は、燃料電池車の世界基準に対して、実質的に最も影響力があるアメリカが態度を明確にしていないため、燃料電池車の本格普及が先読みできない、というものだ。

 欧米の自動車メーカーや部品メーカーへの直近の取材でも、そうした声を聞くことがあった。だが今回、アメリカの動きの現状と今後について分かりやすい図表が提示された。

 フォーラム翌日の2月4日、ハイドロジーニアス(水素材料先端科学研究センター)研究シンポジウムとして4つの部門で詳しい発表が行われた。そのなかで、金属材料研究部門の最初の講演は、「Introduction of Hydrogen Fueled Vehicle Global Technical Regulation (HFCV-GTR)」。日本自動車工業会の燃料電池車ワーキンググループを代表した日産自動車社員が英語で発表した。

 このGTRとは、自動車基準調和世界フォーラム(WP29)での協議で決まる世界基準だ。国土交通省による表記では、WP29の目的は、「国連における自動車に係る安全・環境基準の国際調和と認証の相互承認の推進」とある。

 分かりやすく表現すれば、GTRは関係者による「すり合わせ」の結果だ。またGTRとは「基準」(レギュレーション)と各種の「標準」(スタンダード)の「すり合わせ」でもある。「標準が各種ある」という表現もおかしいのだが、現実的には各種分野の標準化団体が存在しており、それらをすり合わせる必要があるのだ。

 なぜなら燃料電池車は、水素技術、燃料電池、電気自動車の3分野にまたがるクルマだからだ。