先週、産業活力再生法の改正法案が国会で成立し、政府が一般企業に公的資金を注入する枠組みが整備された。これで政府は日本政策投資銀行などを通じて、金融機関ではない一般企業にも大規模融資や出資ができるようになった。

  朝日新聞はこれを受けて、4月23日の朝刊一面で「公的資金活用 前向き」との見出しを掲げ、半導体大手エルピーダメモリや、日立製作所、東芝、パイオニアなどが活用の検討に入ったと報じた。物はいいようだ。他のメディアの報道では、電機以外にも、自動車メーカーや、旧国営の航空会社の名前が挙がっているが、いずれも、はっきり言えば、経営に失敗した企業だ。経営が傾いた企業が公的資金を検討する様を形容する言葉は、本来は“前向き”ではあるまい。

 一般企業への公的資金投入は「百年に一度」という便利な言葉に政府が悪乗りした、有害な政策だ。朝日新聞によると、出資を受けた企業が倒産すれば最終的に国民負担になるため、告示で要件を定め(具体的には、子会社などを含め国内で5000人以上雇用していることや、金融危機の影響で四半期の売上高が前年同期比20%以上減少していることなどが要件として挙がっている)、支援対象を絞るというが、全体を見渡すと、妙に大企業向けの仕組みになっている。たとえば、5000人が失業すれば、雇用への影響が大きいのは分からなくもないが、その線引きの根拠は如何なるものなのか。大企業への影響力行使の手段、あるいは天下りの道筋を作るために、大手企業に出資する方が政府としては魅力的なのだろうかと勘ぐってしまう。

 そもそも、なぜ出資なのか。売上げが足りない、資金繰りが苦しいというのであれば、通常は融資で済む。然るに、公的資金がなぜ必要なのか。ひとつの理由は、単純に、融資の形にして条件を縛った時に、返せる見込みがないということなのだろう。