「ランド・ポール上院議員とFRB(米連邦準備制度理事会)が戦争状態になっている」(CNNマネー、2月11日)。彼は共和党の2016年大統領選挙の有力候補者の1人であり、昨年、このコラムでも紹介したように、10月27日号の米「タイム」誌の表紙で「米国の政界で最も興味深い男」と紹介された人物である。
Photo:AP/AFLO
ポール議員は、2月6日(金)にアイオワ州での演説でFRBへの監査を強めるべきだと“宣戦布告”した。彼が提出したFRB監査法案は一部の民主党議員も含め、30人が共同提案者となっている。FRBは既に米政府監査院(GAO)や他の組織に財務状況を監査されている。しかし、ポール議員の法案はFRBの政策判断の是非までもGAOに監査させ、議会のFRBへの支配力を強めようとするものである。
下院でも同様の法案が提出されており、共和党を中心に100人を超える議員が共同提案者になっている。数年前にも同様の動きがあったが、民主党優位の上院で否決された。しかし、今年から上院、下院共に共和党が優位となる。
強い危機感を抱いたFRBは即反論を開始した。2月9日(月)にジェローム・パウエル理事が、この法案は中央銀行の独立性を侵害すると全面的に反対する講演を行った。ダラス連邦準備銀行のリチャード・フィッシャー総裁など、多くの地区連銀総裁がそれを援護射撃するスピーチを展開している。
米国の“良識的”なコメンテーターの大半はFRB側に付いて、ポール議員の主張を批判している。確かに金融市場の観点から言えば、この法案には行き過ぎの面がある。透明性向上のために、FRB職員の私的な電子メール等も全て公開させるという。そうなれば、職員の率直な意見交換はしにくくなる。加えて、水面下で議論している戦略についての情報も公開していったら、世界の金融市場はその都度大騒ぎとなり得る。