ドラマ「半沢直樹」ですっかり有名になった「金融庁検査」。現実の世界では、この下半期からその検査が大きく変わろうとしている。その内容には先進的な部分も、劇薬も含まれる。果たして、この変化は銀行にとって吉となか凶となるか……。
金融庁検査の虚実
金融庁検査の予告が入って大騒ぎになる行内、大口融資先の資産査定を巡る金融検査官とのせめぎ合い、臨店検査で細かな指摘事項に怯える支店長……といったドラマ「半沢直樹」ばりの金融庁検査が下半期から大きく変わろうとしている。この変化は銀行にとって吉か凶か。今回の金融庁検査方針変更の背景を考えてみたい。
「半沢直樹」は、「伊勢島ホテル」という大口融資先の資産査定を巡る半沢とオネエ系の主任検査官との激しいやりとりを中心に描かれている。「疎開資料」を巡って半沢の自宅にまで金融庁が押し掛けるなど、実際の検査では絶対にあり得ない(銀行法で認められていない)ようなことまで出てくるのはご愛嬌として、これまでの金融庁検査の雰囲気をよく表している。
ただ、金融庁検査は、資産査定だけではない。実際には350ページにも及ぶ「金融検査マニュアル」に基づいてガバナンス(経営管理体制)、リスク管理体制を中心に、これでもかというくらい多数のチェックポイントが設けられている。そして、立ち入り検査でそれらについて検査官が細かな「指摘」をし、それについて一つ一つ、「確認表」(図1)というシートで銀行担当者が反省文を書かされ、印鑑を押して提出するというプロセスをたどる。「確認表」は、図1を見ればわかるように、言ってみれば検査官が指摘したことを認め、懺悔し、「今後〇〇のように対応するから許してください」と謝る、「出来レース」のようなもので、ともすれば金融庁検査官への「お土産」的なものも散見された。