国際会計基準が、いよいよ日本にも導入されようとしています。馴染みがない人も多いと思いますが、その詳細を知ると驚かされます。
たとえば、国際会計基準に基づくと、当期利益という項目がなくなる、トヨタ自動車の利益が9000億円も減少する、家電量販店ではポイント制度の処理で売上高が急減するなど、信じられないようなことが次々と起こる可能性があるのです。
そこで、今回の特集では、初心者でも国際会計基準がわかるよう、「導入した場合に企業にどんな影響があるのか」を試算しました。まずは、大いにこの数字に驚いてください。
国際会計基準は、確実に会社や業務を変化させます。利益などの概念も変わり、企業の業績を読み解く指標も大きく変化します。企業経営者やサラリーマンのみならず、投資家にとっても気になるところでしょう。
国際会計基準は、「IFRS」と表記します。発音は「アイファース」です。実は、日本はすでに一部を先取りして国際会計基準を導入しているのですが、ついに全面適用に向けて動き出す方針が固まりました。
早ければ、2015年にも上場企業に強制適用されます。早期適用も可能で、2010年3月期、つまり今年度から適用可能になっています。
特に早期で即座に影響が出て来るのが、企業買収に関する会計基準でしょう。
通常、企業を買収した場合、「のれん代」が発生します。買収相手の純資産よりも買収価格のほうが高いとのれん代が発生するのですが、日本の会計基準ではこれを20年以内に償却していました。一方で国際会計基準だと、のれん代は償却しなくなります。
すると、大型買収を行なって多額ののれん代を毎年償却している企業は大きく業績が改善することになります。
たとえば、「ガラハー買収」という大型のM&Aを行ったJTが2011年3月期に早期導入した場合、予想純利益は2910億円と、早期導入しなかった場合より約980億円も押し上げられる可能性があります(JPモルガン証券の試算による)。会計制度の変更で、これだけ大きな影響が出て来るのです。
他にも、企業の業績に大きな変化を与える項目がズラリとあります。「進行基準」の導入で、ゼネコンはこれまで以上に業績が厳しくなることが予想されます。「連結決算の加速」で、不動産会社の戦略は大きく塗り替えられそうです。利益を操作可能だった「後入先出法」は廃止になります。
国際会計基準は多数の変更を伴っており、早期適用も間近となっています。この機会に、国際会計基準の最近の動きを今回の特集で先取りしてはいかがでしょうか。他人よりも一歩先んじて国際会計基準を知ることで、あなたのビジネススキルがレベルアップすることは間違いなしです。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)