味に自信はある。だからこそ、そんな実家の宝である干物を新たな魅力で発信するべく、サスニンベンのイメージ戦略を担うことになった俊成さん。

「ほかと同じことをしていては目立たない。これまで干物とは縁が遠かった、僕ら世代である30代くらいの方々にPRできたらと思いました」

 コンセプトとしては女性が、友達の家に遊びに行くときに「ケーキ」のように手土産に持って行ける干物。そして結婚式のギフトや、内祝いになるような干物を目指した。

 大学では建築を学び、卒業後はアパレル、インテリア業界で働き、ビジュアル的に優れたものを見てきた俊成さんは、学生時代、イタリアンの厨房で腕を振るっていたというほど料理も得意。そして「子どものころから美術は得意」という元来のセンスのよさが発揮されることになる。

 新たな場所での店舗再開にあたって、どんな雰囲気の店舗にするのかが課題となった。従来の店舗は歴史を感じさせる、昔ながらの佇まいだった。

干物のショーケースは高級ジュエリー用!
店内に干物を並べない理由とは?

サスニンベン代表・磯崎威志さん、俊成さん、登久子さん。みなさんのホスピタリティあふれるおもてなしも、サスニンベンの大きな魅力

「新店舗はちょっと変わったビジュアルのほうがいいんじゃないか」と語ったのは俊成さんのお兄さん。

「兄弟で飲んでいるときに、そんな話になって(笑)。これまでの干物店のイメージとは全然違った、女性でもふらっと入れるような空間があってもいいんじゃないかと思ったんです」(俊成さん)

 俊成さんが描いた、和モダンな雰囲気の建築設計図をもとに新たな店舗造りがスタートした。家族総出で床を張り、ペンキを塗り、新生サスニンベンは、これまでの干物店のイメージを覆すおしゃれな店舗で、劇的なリニューアルを果たした。

 店の什器類もこだわりぬいた。干物を入れるショーケースもすごい。

「合羽橋に食品用のケースを探しに行ったんですけどね。息子が、どうしてもこれがいいと言い出しまして…」(威志さん)

 なんと、それは高級宝飾店で使われるジュエリー用のケース。お店で何を入れるのかと尋ねられ「干物です」と答えたところ、店員が絶句したのはいうまでもない。かくして、数百万のジュエリーが並ぶはずのケースには、数百円の干物のサンプルが並ぶ。

 そして従来の干物店と違って、サスニンベンの店舗内にはどこにも干物が出ていない。「スタバやタリーズだって別に商品は並んでいませんよね」(俊成さん)。だからいよいよ、魚屋感が払色されているのだ。