先ほどのソニーのケースでいえばそれぞれ、大賀会長、丸山ソニー・ミュージックエンタテインメント社長、久夛良木氏。ドコモの場合なら、大星社長、榎ゲートウェイビジネス部長、松永氏ということになろう。

 理研の場合、事件後の対応などを見る限りでは、大ボス(の立場)の覚悟がどのくらいであったのかいささか疑わしい。メンター的な役割は、当初は非常勤の共同研究者であり、途中からは名実ともに実力のある方がその役割となったが、自分のメインの役割を論文作成の支援と認識していたようである。実行責任者は、まだ若く研究者としての十分な訓練を積んでいない状況であった。後付けの解釈にしか過ぎないが、新規の大きなプロジェクトを成功させる上で必要な三者が揃っていたとはいえず、十分な布陣ではなかったのである。

 昨今、多くの会社がM&Aを行うようになった。海外への挑戦、新技術の吸収、規模の経済性の獲得など、なるほどそれはあるな(失敗するかもしれないが)、と思うものも多い半面で、「買わずとも自分たちでやればよいのではないか」と思うような案件も少なくない。いろいろ聞いてみると、実際のところ、大ボス、メンター、実行責任者の三者どころか、実行責任者を任せられる可能性のある人ですら社内には見つからない事が多いようだ。

 大企業における新規事業は、独立して始めるベンチャービジネスよりも、使えるお金やスケール、社会的影響力において大きな魅力があるはずなのだが、今や誰もやりたがらない絶滅危惧種的存在になりつつある。脚光を浴びる新ビジネスのほとんどが、低資本でできるソーシャル、スマホ、情報編集系なのは少しさみしい。

(構成/大高志帆)

※なお、本記事は守秘義務の観点から事案の内容や設定の一部を改変させていただいているところがあります。