「情報」は武器です。国際政治においても、インテリジェンス(諜報活動)が国力を左右していますし、ビジネスの世界においても、情報感度の高い会社やビジネスマンが有利に仕事を進めています。それは、社内政治においても同じです。社内の重要情報を公式発表前に入手できる人が、強い政治力を手にするのです。逆に、情報感度が鈍い人は、ライバルに簡単に出し抜かれてしまいます。では、どうすれば「情報力」を高めることができるのでしょうか?

「重要情報」に早く
アクセスできる者が勝つ

  社内政治における「情報」「インテリジェンス」というと、不正経理の資料を入手してクーデーターを起こすとか、敵対する部署の製品の欠陥に関する隠蔽工作を暴くなどといった、ドラマチックなことを思い浮かべるかもしれません。たしかに、そういうウラ情報は、社内政治を大きく動かす情報ではあります。

 しかし、一課長がなかなか入手できるものではありませんし、そういう情報を嗅ぎまわるのは危険すぎます。ここで問題にしたいのは、そうしたごく限られた人間が握っているウラ情報ではなく、社員ならば誰でもアクセスできるオープンな情報です。

 社内には、日々、膨大な情報が流通しています。
 市場に向けた新製品のリリース情報から、社内報などに載る全社的情報、部署内で一斉送信される業務メールや会議の議事録などの公式情報まで。さらに、「役員会議で新規事業の話が出ているらしい」「社内横断プロジェクトが検討されているらしい」という非公式情報から、日常会話でやりとりされる「○○さんが退職するそうだ」といった個人情報まで、種々雑多な情報が飛び交っています。

 重要なのは、その膨大な情報の「上澄み」をすくい取って、上手に活用することです。これができる人は、社内で有利な立場に立つことができ、そうでない人は不利な立場に追いやられてしまいます。情報力が政治力に直結するのです。

 たとえば、「役員会議で新規事業の話が出ているらしい」という非公式情報が入ってくるかどうかは、決定的な差を生み出します。多くの場合、担当部署などの細部が決定したうえで、こうした情報は公式発表されます。その前に情報を入手して、「その事業は自分の部署に関係するのか?」「間接的な影響はあるのか?」「有望な事業か?」「自分の部署に引っ張ってくることができるか?」などと、他の課長に先駆けて検討・準備・アクションできるかどうかが命運を分けます。

 あるいは、情報を掛け合わせることで、社内動向を察知することもできます。

 たとえば、BtoBのサービスを担当している部署の人物が抜擢されたと発表されたとします。その情報だけでは、単にその人が優秀で抜擢された可能性も考えられます。

 しかし、そこに、かねてから上層部でBtoB部門とBtoC部門が対立していたという情報が加わればどうでしょうか? もしかすると、この抜擢人事は、BtoB部門が勝利をおさめた証拠かもしれません。だとすれば、今後、会社はBtoCよりBtoBのサービスを重視していく可能性が高いと推測できます。であれば、その真偽を確認したうえで、それが自分の部署に与える影響を考慮して、なんらなかの準備をしておけば、状況変化に適切に対応できるでしょう。