新・八郷社長が
繰り返し発した
「チャレンジ」

 ここ最近、伊東社長は「ホンダらしさ」「チャレンジ」という言葉を繰り返し、品質問題で失いつつあった自身の求心力を高めることに腐心していた。会見では八郷常務もこれに呼応するかのように、「チャレンジ」という言葉を何度も発したのが印象的だった。

八郷常務は「ホンダらしいチャレンジングな商品や技術を継続的に出していく」と意気込みを語った

「ホンダらしさを実現すべく、F1へのチャレンジ、ジェットの初飛行、スポーツカーの復活、ホンダロボティクス(歩行アシストなど人の役に立つロボット技術)の進化、水素社会へのチャレンジを続けてまいりました」(伊東社長)

 しかし、一連の品質問題に区切りがついたかといえば、フィットについては確かにクリアしたのだろう(週刊ダイヤモンド3月7日号・特集2「Mr.クオリティ 単独インタビュー」参照)。だが、タカタ製エアバッグに関しては、不具合の原因究明はまだなされていない。

「15年、飛躍する準備は整いました。今ここで新しく若いリーダーの下、一丸となってチャレンジすべきと考え、八郷に社長を引き継ぐことに決めました」(伊東社長)

「年明けに中国にいるときに、伊東さんから電話で(社長就任の)お話がありました」(八郷常務)

 直近の歴代社長の在任期間を見れば、川本信彦社長(8年)、吉野浩行社長(5年)、福井社長(6年)である。丸6年になる伊東社長もそろそろ代わる時期ではあった。だが、疑問は残る。

 未来のホンダを見据え、生き残りを懸けて改革を断行してきた伊東社長。会見で浮かべた涙の意味は、最後に花道を飾れなかった悔しさだったのかもしれない。