やや話が広がるが、ビジネスを行う際、このホンネとタテマエの狭間で苦しむ人に目をつけると、成果を出せる可能性が高いのではないかと、筆者はかねがね思っている。

2.自営業に限らず捨て身の
ビジネスモデルは強い

 マスターのビジネスモデルは、ある意味で自らの「高卒」という学歴コンプレックスをバネにしたものだった。賛否両論あるだろうが、ここまで財をつくり、一応は70歳近くまで店を守ったのだから、「成功した人生」だったのではないだろうか。マスターと話して不愉快な思いを抱き、店に近寄らなくなった人も少なくなかったが、学歴のハンデを克服するためには、屈折した思いもある程度は必要だったのだろう。

 ここに、ビジネスモデルをつくる上での盲点がある。モデルをつくるのは、ビジネス書に書かれているようなテクニカルなものばかりではない。その根幹を成すのは、もっと人間の本性に近い「負のエネルギー」なのである。たとえば、「世の中を見返してやる」「あいつには負けたくない」といったものだ。これらがホンネではないだろうか。

 マスターも、かつてはビジネス書を読んだり、税理士と話し合ったりして、多少なりともビジネスモデルをつくるために勉強はしていたようだ。しかし、小さな店の経営を維持するのに、そんな理屈は必要ないのかもしれない。大きな会社に務めるビジネスパーソンでも、突き詰めると「負のエネルギー」を持って生きていくことは大切である。「見返してやる」「負けたくない」「ちくしょう」といった捨て身の感情こそが、武器になるのだ。

 なお、今回紹介した「負け組御用達スナック」は、筆者の他の連載でも取り上げたことがある。興味のある向きは、こちらも参考にしてほしい。

「負け組御用達スナック」の恐るべき魔力! 過去の栄光話から抜け出せない常連客たち