ファイナンスでは、「金銭には時間的価値がある」、つまり「今日の1円は明日の1円よりも価値がある」と考える。将来のある金額と同等の価値がある今日の金額のことを、(将来のある金額の)現在価値と言う。

金銭の時間的価値

 ファイナンスでは、「今日の1円は明日の1円よりも価値がある」という考え方をする。これは、(1)今日の1円は銀行に預金すれば金利を稼ぐことができる、(2)明日の1円は今日の1円に比べて不確実である、という理由からだ。

 (2)の不確実性には、期待していた額面の金銭が手に入らない(たとえば、明日1円入手できると思っていたが、結局0.9円しか手に入らなかった)場合や、インフレーションやデフレーションにより金銭の購買力が変化する(たとえば、1円を手に入れることができても、インフレで値段が上がり、予定していたものが買えなかった)場合がある。

現在価値(Present Value)

 将来受け取る金銭の、今日の時点での価値のことを「現在価値」と呼ぶ。n年後に受け取る現金Cの現在価値(PV)は、割引率(後述)をrとすると、以下の式で計算することができる。

 たとえば、金利(国債の金利)が2%のとき、1年後に年金として政府から100円受け取るとする。このときの100円の現在価値(PV)は、金利をそのまま割引率として用いると下記のとおりになる。

 この結果から、1年後の100円と今日の現金98.04円は同じ価値になることがわかる。政府が「年金を一時金として今日95円受け取るか、来年まで待って100円受け取るか」と選択を迫ってきたら、来年まで待ったほうがよい。なぜなら、来年の100円は今日の現金にすると98.04円に相当するので、95円よりも価値が大きいからだ。