自動車メーカーのジレンマ

 こうしてUberやLyftのようなシェアライドビジネスが拡大している状況について、多くの自動車メーカーは危機感が希薄だ。

 なぜなら自動車メーカーの上層部は、これは新種の「トランスポーテーションビジネス」であり、自動車メーカーの専門である「製造販売業」とは違う領域だ、と考えているからだ。

 しかし、現実は違う。例えば今年2月、東南アジアの大規模な都市で、日系自動車メーカーの駐在員が次のように言った。

「もっともっと、数多く売らなければならない。しかし、売れは売るほどこうやって渋滞がどんどん酷くなる。本当にこれで良いのか? 最近、そんなことをよく考える」

 自動車メーカーのビジネスモデルは、社会に対して一方的な“売り切り型”だ。しかし、環境問題や渋滞対策など、社会との共存共栄を考えると当然、シェアライド型も検討しなければならない。

トヨタ、仏グルノーブル市、仏大手インフラ関連企業などが共同で行なっている移動体シェアリングの実証試験。キーファクターは、公共交通との共栄共存 Photo:TOYOTA Europe

 そのうえで、例えばトヨタの場合、愛知県豊田市や仏グルノーブル市で小型電動移動体の「i-ROAD」やトヨタ車体「コムス」を使った社会実証試験「ha:mo(ハーモ)」を実施している。またベンツは欧米日で「スマート」のEVを使った「CAR2GO」を展開し、利用者数を増やしている。

 だがこうした試みはあくまでも、既存の“製造販売業”のなかのオプション的な位置付けだ。既存の“売り切り型”のような収益を上げることはできず、実証試験の領域+α程度の事業規模だ。

 さらに、こうした試みは、新規車両の導入が前提であり、UberやLyftのような“余っている普通の人のクルマを代用する”こととは大きく違う。自動車メーカーとしては、UberやLyftと同じビジネスモデルは検討できないはずだ。なぜなら、新車が売れなくなるからだ。