最新情報発信としての機能低下
単なる業界ネットワーキングの場
「いや、ビックリした。メディアの数が随分少なくなった。(首から下げている入場パスの種類を見て)ほとんどが同業他社の関係者。それに発表の内容、こんなものでいいンでしょうか? これじゃ、ただの新車発表会。昔は、アメリカらしくエンターテインメント性を凝らしながら、“これから会社が目指す方向”をしっかり提示していた。それがいまではすっかり様変わりしてしまった。本当に、ガッカリした」
10年ぶりにデトロイトショー(正式名称:北米国際自動車ショー)を訪れた日系自動車メーカー関係者はそう言って、表情を曇らせた。
筆者も彼に同感だ。最近のモーターショー、特にデトロイトショーの劣化が酷い。ワクワクドキドキ感がまったくない。未来を示唆するコンセプトモデルは昨年に続き、今年も出展はゼロ。今年と来年に「売らんがため」のクルマしかステージに上らない。
しかも、そのほとんどはネット上で、メーカー側が事前にネタをばらしている。以前は、独ニュルブルクリンクサーキットや米デスバレーでの開発テスト風景のスパイフォトやスパイビデオが話題となったが、最近ではそうしたスクープ競争の熱も冷えている。またデトロイトショーの報道陣公開日の前日等に、一部のメーカーはメディアやディーラー関係者向けの独自パーティを開催し、その場で翌日のショー本番に登場する新作を公開している。
そして最も大きな課題が、「クルマという商品」のネタ切れだ。クーペ、セダン、SUV、さらにはそれらのカテゴリーを融合したクロスオーバー等、ひと通りの外観パターンは出し尽くされている。5~6年毎のフルモデルチェンジでも、いわゆる「正常進化」のケースが多く、新鮮味があまり感じられない。そうした業界の実情を今回、米デトロイト3(GM、フォード、クライスラー・ダッジ)で強く感じた。
さらに、デトロイトショーの経年劣化の事実を浮き彫りにしたのが、メルセデスとフォードだ。それぞれのCEOが行なったプレゼンテーションの前半で、前週にラスベガスで開催されたCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)の模様を詳しく紹介。イノベーティブな話題はCESで出し尽くした、と言わんばかりだ。