「銀行を使っているのは、今じゃスマートフォンを使わない年寄りだけだよ。銀行の窓口では延々と待たされるし、他行への送金だと手数料を取られる。でも、これなら、電気、ガスの支払いはすぐ完了するし、他行への送金も無料。映画やコンサートのチケット、航空券も買えるからすごく便利」
北京在住の知人(中国人)はそう言って、スマホのアプリを見せてくれた。中国の電子商取引最大手、アリババグループの「支付宝(アリペイ)」である。同グループのオンラインショッピングでの支払口座を管理するそのアプリは、今では利便性が極めて高い多様な資金決済機能を利用者に提供している。
アプリの画面内にある「余額宝(ユエバオ)」をタッチすると、支付宝の余裕資金をマネー・マネジメント・ファンド(MMF。投資信託の一種)で運用することができる。24時間資金の出し入れが可能でありながら、今は4.6%の利息が付く。銀行の定期預金よりも圧倒的に利息がいい。
昨年、支付宝や余額宝が爆発的に人気を高め始めたころ、銀行業界は預金の流出が大規模に起き始めたことに危機感を抱き、金融当局に規制を強化するようロビー活動を行った。規制で抑え込まれた部分もあったが、結局、市民は支付宝と余額宝を支持。前出の知人は「周りではみんな銀行を使わなくなってきている」と話していた。
こういった既存の業界を脅かすIT革命のスピードは、日本よりも中国の方が速いように思える。例えばタクシー業界。中国の大都市部ではスマホのアプリでタクシーを呼ぶことは今や当たり前だ。スマホを持っていない人は街中でタクシーを捕まえられないという事態も起きている。