安倍首相は国会での施政方針演説で“戦後以来の大改革に踏み出す”と述べましたが、少なくとも経済政策に関しては、演説であげられている取り組みを見ても分かるようにまだそこまでの内容にはなっていません。従って、今年夏に策定する成長戦略で更なる構造改革に取り組むことが不可欠ですが、その試金石となるであろう二つの改革論議が政府内で進んでいます。
企業の農地所有は実現するか
Photo:hiroshiteshigawara-Fotolia
一つは更なる農業改革です。施政方針演説ではJA全中の解体が改革の筆頭として挙げられていますが、農業改革の観点からはまだ不十分です。
農協改革という観点だけからみても、まずJA全農の株式会社化は先送りされました(JA全農は組合員の農家が作る農産物をまとめて販売したり、肥料や農機具などの資材を共同購入しており、肥料で8割、農薬・農業機械で6割のシェアを持つにも拘らず、協同組合であるために独占禁止法が適用されず、税制上も様々な優遇措置が認められている)。
また、農協の准組合員による事業利用の制限も先送りされました(今や農協は正組合員(農家)よりも准組合員問題(農家以外)の数の方が多く、それが住宅ローン、保険など収益性の高い農協の金融事業を支えている)。
さらに、農業全体の改革という観点からみると、流通を担う農協の改革ばかりが先行し、肝心の生産の部分の改革が不十分です。農業での生産性の向上のためには農地の大規模化が不可欠なのに、純然たる民間企業が農地を所有することが制限されています。具体的には、農業生産法人を設立すれば農地を所有できますが、要件として、農業関係者が総議決権(資本)の3/4以上を占め、役員の1/4以上が農作業に従事する株主でなければなりません。民間企業で当たり前の所有と経営の分離が行なわれていないのです。
もちろんJA全中の改革は政治的に抵抗の大きな問題であったことを考えると、それ自体は高く評価すべきであるものの、それだけで終わってしまっては農業を成長産業にするのは難しいのです。