「邦銀には相当影響が出るし、日本にとっては国家財政に関わる問題。世界経済にもインパクトを与える話で、銀行の監督当局が決めるルールに収まるスケールではない」

国際的な金融規制を決めるバーゼル銀行監督委員会の常設事務局が置かれる国際決済銀行(BIS)

 日本の金融当局幹部が気色ばむ、重大な銀行への規制議論が水面下から顔を出そうとしている。世界の金融当局者で構成され、国際金融規制を決めるバーゼル銀行監督委員会。そこでは現在、銀行が持つ金利の上昇リスクに対して自己資本の積み増しを求める案が議論されており、3月中にもたたき台が公表される見込みなのだ。

 金利が急上昇すれば、国債の価格は急落して銀行は巨額の含み損を抱えてしまう。また、貸出金利が長期で固定されたまま資金の調達金利が上がれば、逆ざや状態を招く恐れもある。そうした金利リスクに備えて自己資本を厚くするというのが新たなルール案だ。

 ただ、邦銀は日本国債を大量に抱えている。しかも、邦銀のビジネスモデルは主に短期金利で預金による資金調達をし、長期金利で融資をして長短の金利差で収益を上げる構造のため、影響は甚大だ。

 新ルールが導入されれば、邦銀は金利リスクを落とすために国債を大量に売る可能性がある。となれば国債価格の急落(金利の急上昇)を招いて、自ら金利リスクを顕在化させかねないのだ。

「英国やドイツの主導で進んできた」(メガバンク幹部)この新規制案だが、日本は米国などと共に反対の立場だ。国益を懸けた各国の“綱引き”が行われており、「日本にとっては当初の案よりだいぶマシになってきた」(同)。

 とはいえ、「今度出てくる案は相当粗くて全世界で物議を醸すはず」(前出の金融当局幹部)とのことで、予断を許さない状況だ。