選挙に勝ち抜いて新人市議になったAさんは、同僚議員たちの選挙公営費を調べてみることにした。同級生の印刷業者が発したあの言葉が、気になっていたからだ。選挙収支報告書を見てみたら、ビックリ仰天する数字が並んでいた。なんと、全員のポスター代が上限額に張り付いていたというのである。Aさんは「議員である間は゛村八分゛になる恐れが強いので、この件については黙っています」と小声で語るのだった。

 Aさんの市では、ポスター掲示場数がポスター枚数の上限となっており、同僚議員の水増しが疑われるのは枚数ではなく作成単価の方だった。詳細を明らかにできないので、先に紹介した都議選の港区の事例を見てみよう。

 港区選挙区のポスター作成単価の上限額は、1521円となっていた。5人の候補者の請求額を見ると、1521円、1520円、1500円、1150円、1090円80銭となっている。確かに、「もらえるものは目いっぱいもらおう」と思うのは人情かもしれない。その意味では、過剰過大な公費負担がよからぬ行為を誘発させているとも言える。しかし、税金の適正公平な使い方をチェックする役割の議員になろうという人たちが、その入り口の段階で税金をくすねるような行為に手を染めていたら、話にならない。

公費を負担しているのは「住民」
選挙公営の在り方を問い直そう

 選挙公営費の水増し請求を座視できないと、公費負担限度額の削減に動いた地方議会もある。愛知県豊明市議会は、2010年の9月議会で選挙公営条例を改正し、約37万円だったポスター代の公費負担限度額を約22万円に減額した。また、水増し請求が発覚して議員辞職が相次いだ岐阜県山県市議会は、2007年に選挙公営条例そのものを廃止した。その後の市長選や市議選に何の支障もないという。もともと町や村では選挙公営制度が存在せず、公費負担なしで選挙戦が実施されている。

 選挙公営のあり方をきちんと議論する必要があるのではないだろうか。少なくとも選挙管理委員会は、各候補者の公費負担請求の内訳を積極的に公表する責務があると考える。住民などからの情報開示請求を待たずに、HPなどに各候補の公費負担の利用情報を載せるべきではないか。なぜなら、公費負担しているのは選挙管理委員会ではなく住民であるからだ。