父が看板に掲げた「技術を貫く」

奥田健次(おくだ・けんじ)
臨床心理士/専門行動療法士/行動コーチングアカデミー代表。常識にとらわれない独自の指導プログラムにより、さまざまな子どもの問題行動を改善させる行動分析学者。数万件以上の難問題を解決してきた手腕から「子育てブラック・ジャック」と呼ばれ、日本各地のみならず世界各国から指導依頼を受ける国際的セラピスト。『NNNドキュメント』『スッキリ!!』では、「今、最も注目されている教育者」として紹介。『あさイチ』他にも出演。著書に、『世界に1つだけの子育ての教科書』『拝啓、アスペルガー先生【マンガ版】』『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』『メリットの法則』など。

奥田 そういうところも共感してしまう。僕もそうなんです。「子どもの不登校を直してくれたら高額の報酬を払う」とか言われても、クライアントが気に入らなかったら断ります。子どもの頃、印象に残るバイト先の店長がいます。ひな人形の専門店でバイトしていたんですけど、そこに横柄な態度のお客がきたんです。そのとき店長が「もう帰れ!」と言った。

石坂 おお!

奥田 お客はキレて、「なんや、その態度は!? それが客にモノを売る態度か!!」と怒鳴った。そうしたら店長は「売ってるんやない! 売ったとるんや! お前には売らん!」と一喝した。「かっこええな!」と思ってしまいました。

石坂 そういうのがかっこよく見える年頃だったのかも(笑)。

奥田 それでマネしたんです。その数年後、大学生になってコンビニでバイトをしているときに、一緒に働いていたパートのおばちゃんがタチの悪いお客に難クセつけられた。ハンバーガーを十数個も頼んで、「まだできんのか!」「とろくさいな、ばばあ!」と怒鳴りまくる。そこで僕は、「そんなに早くハンバーガー食いたかったら、その先のマクドへ行ったらええやないか!」と。するとお客がキレて、「おまえはどんな態度でモノ売っとんのや!」と言うから、内心で「来た来た、これや!」と思い、次の瞬間「売ってるんやない! 売ったっとるんや!」とね。

石坂 店長は困ったでしょ(笑)。

奥田 悲しそうな顔で「奥田くぅん、そういうのはダメだよ」と言うから、「いや店長、ああいうお客には毅然とした態度で接しなくてはいけません」と逆に説教しました。サービス業だからといって、何でもお客の言うとおりにするわけじゃないでしょ。

石坂 父が看板に掲げたのは「技術を貫く」ということでした。廃棄物をどうリサイクルしていくかということに情熱を注いだ。ただ、その想いが社員にも周囲にも伝わらないところがありました。私は、父が永続企業をつくりたいのであれば、そこは変えなきゃいけないと思った。そこで父娘のバトルが始まるんですが……。