「週刊ダイヤモンド」2015年3月28日号の特集は「叱れない上司 叱られたい部下」。今や親も先生も先輩も叱ることは少なくなり、学生時代の厳しい上下関係は崩壊。社会に出て初めて上下関係に触れ、「叱られたい」と思う若手が増えているといいます。

「週刊ダイヤモンド」2015年3月28日号の特集は「叱れない上司 叱られたい部下」

 職場の上司と部下の関係に地殻変動が起きている。一昔前と真逆で、「叱れない上司」と「叱られたい部下」が増えているという現象が起きているというのだ。

「私もほかの人のように叱ってほしい」。社会人1年目の高木望美さん(仮名)は、あるとき上司に直訴した。

「先輩がプレゼンのダメ出しを受けて悔しがっている姿を見て思ったんです。自分はもっとひどいゴミのようなプレゼンをしたのに、周りは何も言ってくれないから悔しさも感じない。やばいなって」

 それまでは何でもそつなくこなして叱られずに生きてきた。しかし、いつまでもそれで大丈夫だとは感じていないのだ。

「私が叱られないのは成長を期待されていないからだと思って悲しくなりました」

 高木さんの危機感と本気は上司に通じて、直訴してからは頻繁に厳しく叱られるようになった。「叱られるとおなかが痛くなるけど、仕方ないってやり過ごしていた姿勢が変わりました」と自身の成長を実感しているという。

「私は叱ってくれる上司に当たりたいです。何も言われなければ今の自分に満足してしまう。お尻をたたかれない状態で自ら成長しようって思うほどの向上心はないんですよ(苦笑)」

 社会人2年目の市川敬一さん(仮名)は「褒められ疲れしていますね」と話す。「褒めて育てられた実感がありますけど、大人になったら褒められても、それウソでしょって思う。思ってもいないことを言われたくないんです」。

 また、「叱られずに放任されやすい」という職場環境にも不満があるという。「そうすると仕事を覚えるスピードも遅くなる。今は何をやっていいか分からないことも多いので、教えてもらうことに対する欲求はすごく強いです」。

「将来に不安がある」として、もっと叱ってほしいと語るのは、同じく社会人2年目の永野英之さん(仮名)だ。「叱られた分、成長できるから鍛えてほしい。成長しないと転職するときに困る」。

 大手広告代理店に勤め、今の時点で転職願望があるわけではない永野さんが、こうした危機感を抱くことに隔世の感を禁じ得ない上司世代も多いかもしれない。