不正受給対策にもならない
プリペイドカード化

釜ヶ崎には、生活保護・介護を含めた生活支援の「ワンストップサービス」を提供するアパートが多数。良くも悪くも、公的福祉の「谷間」に落ち込みがちな人々に対する支援を提供していることは間違いない
Photo by Y.M.

 ネット世論では、生活保護費プリペイドカード化に、不正受給対策としての期待も持たれているようだ。海部美知氏の書籍「ビッグデータの覇者たち」には、米国でクレジットカードの利用データを細かく分析することにより、拾得したり盗んだりしたクレジットカードを不正利用する場合のパターンが、

「最初にスニーカーを買い、その後、車2台分のガソリンを買う」

 と具体化されていること、その通りの購買活動をすればカードを止められてしまうことが、現地のジャーナリストの言葉として紹介されている。同様に、「生活保護利用者の不正受給のパターン」を明らかにすることは可能だろうか?

 そもそも「まず不可能なのではないか?」というのが、この期待に対する私の見方だ。生活保護利用者本人による生活保護費の不正受給のうち最も多いのは、就労申告の申告漏れだ。現在の運用では、「うっかり忘れていた」「知らなかった」までも、原則として不正受給と扱うことになっている。その運用の是非はさておき、「就労申告の申告漏れ」の場合、原因は、就労して収入を得ることに加えて、その収入を故意または「うっかり」で申告しないことにある。「故意」の背景には、

「1ヵ月に10万円稼いでも、収入申告すると、最大で3万円程度しか手元に残らない」

 という、現在の生活保護のシステムそのものの問題がある。

「モチベーション下がりまくりですよ」という言葉は、私も何人かの生活保護利用者たちから聞いた。彼ら彼女らは可能な限りの就労を続けており、多い月には1ヵ月あたり10万円程度の収入を得ており、もちろん、正直に収入申告している。その結果、「使えるお金の増加<稼いだお金」となってしまう。これは、生活保護のように上限を設けるタイプの給付に「つきもの」となる問題の一つであり、「もしも、就労収入を申告しないことができれば」という思いの背景ともなっている。いずれにしても、「消費」部分のプリペイドカード化、しかも使用可能な金額の上限が「1日あたり2000円」に設定された部分の消費を監視することは、おそらく不正受給発見の手段にも対策にならない。

 むしろ、このプリペイドカード化に関して目を光らせたほうがよいのは、生活保護利用者ではない人々による、何らかの利得の「受給」であろう。