カヤック社長 柳澤大輔 |
「何をするか」より「誰とするか」――。インターネットを活用したサービスの開発・運営を手がけるカヤックの原点は、そこにある。
社長の柳澤大輔は、大学時代、「いつか起業しよう」と、親友の貝畑政徳、久場智喜とたびたび語り合っていた。もっとも、あくまで学生の“ノリ”で話していただけで、具体的にどうしようと決めていたわけではない。ただ、一つだけはっきり決めていた。「起業するならこの3人でやろう」――。
大学を卒業すると、3人は、あえて別々の道を選ぶ。柳澤はサラリーマンに、貝畑は大学院へ進学し、久場は米国放浪の旅へ出た。起業したいという思いが本物なのかどうか、確かめたかったのだ。
2年後、3人の進む道は再び一つになる。1998年、3人は、現在の会社の前身である合資会社カヤックを設立した(2005年に株式会社カヤックに事業引き継ぎ)。
柳澤が、「何をするか」より「誰とするか」にこだわるのには理由がある。「信頼し合える仲間がいれば、放っておいてもおのずと新しくておもしろいものがつくり出せる」。人と人がつくり出す“場”の力を柳澤は信じている。
だから起業したときも、何をするか決めていたわけではなかった。大学で学んだインターネット関連の技術を生かして、まずはホームページの受注制作から始めた。
それから1年もたたないうちに、“場”の力が新しい事業を生み出す。1999年、「777プロジェクト」と銘打って、7月7日に7個のネットサービスを一気に立ち上げると、翌2000年には、「T―SELECT」というTシャツのオーディションサイトを開設。素人が応募したTシャツデザインに、10人以上買い手がつけば製品化できる、というネットならではのユニークな仕組みで注目を集めた。
それがヒントになって、その後、プロ、アマチュア問わず誰でも、自分の絵画作品を1平方センチメートル当たり約3円で“測り売り”できる「アートメーター」も誕生した。