今では数少ない例となりましたが、北陸三県の万能工作機産業は、刃物や金属加工における職人技と、コンピュータなどの最新技術の融合による精密な製品づくりで、圧倒的に高い国際競争力を持っています。職人技の伝統は新興国・途上国にはなく、他の先進諸国と比較しても日本の職人技の水準は高いのです。ただ現状では、多くが部品生産の段階にとどまっていたり、完成品でもデザイン力に欠けるなどの問題があります。近代工業技術にどう組み込むかが今後の課題ですが、日本経済の目指すべき方向の1つと言えるでしょう。

住居費負担で高齢者難民が続出
「公共賃貸住宅」の必要性とは?

 では次に、社会保障制度について考えましょう。今の年金制度に未来はなく、日本は新たな社会保障制度を考えるべきだと、前述しました。私は、発想の転換が必要だと思います。世代間の所得移転というフローでは高齢者を支え切れないことは明らかなので、社会的ストックによって高齢者の生活コストを下げようという新たな発想です。

 高齢者の生活コストで圧倒的に大きいのは、住居費です。そこで、比較的良質で低家賃の「公共賃貸住宅」(低所得者向けの公営住宅ではなく、入居に所得制限がない公共住宅)を大量につくるのです。ポイントは、家賃補助、利子補給などの財政負担なしに家賃を引き下げるスキームを考えること。たとえば、200年使える公共住宅をつくり、建築費は200年かけて家賃で回収します。民間にはとてもできませんが、国や地方自治体なら200年の借金も可能だから、財政負担なくして家賃は相当下がります。

 用地は、区役所をはじめとする公共施設の上や遊休公用地を活用します。土地代がゼロなので、最終的に月額の家賃を2~3万円程度に抑えることも可能でしょう。使ったのは国や自治体の信用力と遊休地・遊休空間であり、財政負担はありません。建築費や維持補修費は家賃で全額回収されるから、そのための借金は別に経理すればいいでしょう。「民業圧迫」と言うのなら、建設や運営を民間が行うPFIやPPPを活用することにします。

 そして、公共賃貸住宅に介護施設を併設し、若い人の入居も可能にすれば、財政の効率化やマンパワーの確保も図れます。年金は出し手がどんどん細りますが、ストックは細りません。欧米先進国では、公共賃貸住宅が高齢社会の安全弁として不可欠の役割を果たしています。人口減少高齢社会にふさわしいシステムだと言えるでしょう。

 次に、財政崩壊をどう回避すべきか。私は「小さな財政」を目指すべきだと思います。ここまで高度化した都市国民生活は、もはや高度な行政サービスなしには成り立たちません。「小さな政府」、すなわち行政の責任分野を縮小して国民の自己責任を拡大することは、言い得て困難です。