世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。
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首都圏にもある! 「その土地ならでは」の食を味わえる店
神奈川には箱根や鎌倉など、海外のフーディーが多数訪れるグルメスポットがありますが、ここではあえて「湯河原」を取り上げたいと思います。
なぜなら、湯河原は今、大きく進化しようとしているからです。
湯河原は、温泉地として全国的な知名度を誇る箱根と熱海にはさまれた位置にあります。新幹線は停まりませんし、箱根や熱海ほど大型の観光バスが押し寄せるわけでもありません。
言ってみれば、観光地としてはエアポケット的な存在です。
しかし、それがこの地域の実力を水面下で高めることにつながりました。
湯河原には、大きな資本や派手な観光開発が入りにくい代わりに、小さくても価値を持つ店が、じっくりと根を張る余地があったからです。
知る人ぞ知る温泉地という適度な知名度と、山と海に囲まれた食材の豊かさ、そして首都圏からのアクセスの良さ。そのバランスが絶妙なのです。
たとえば、湯河原駅から徒歩5分ほどのところにある日本料理店「お料理 加瀬」。ここは、もともと近隣の料理旅館で長年料理長を務め、ミシュラン二つ星を獲得した実力者が、独立してオープンしたお店です。湯河原の自然と食材を活かし、細部にまで手の込んだ技がちりばめられた逸品を堪能できます。
また、世界の食のトレンドを、この地で提供している店もあります。「荒井商店」です。荒井商店は、本書のP36でも説明した、今食通の間で注目されているペルー料理を提供しています。
オーナーの荒井隆宏シェフはフランス料理を学んでから、偶然出会ったペルー料理に魅せられて現地で修業。そして、2005年に新橋で店を開いた後、2023年に湯河原へ移転してきました。
ペルー料理といえばじゃがいもが欠かせません。そのため、出される料理は、近隣でとれた魚介を活かしたポテサラなど、独特の風味と食感を楽しめる品がそろっています。
この2軒に代表されるように、湯河原には、腕利きの料理人が自由に活躍できる風土があります。ウナギ料理が旨い料理旅館や、天然酵母のパン屋、スペインバル、寿司屋なども増えてきており、町全体に新しい風が吹き始めています。湯河原では夕食を外で食べられる「泊食分離」の旅館も増えています。こうした宿に泊まると好みの食事と温泉を一度に味わえることでしょう。
名だたる観光地の間に、ひっそりと佇む湯河原。そこにしかない一皿のために足を運ぶ価値は、十二分にあると言えるでしょう。
『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか?』では、首都圏でローカルガストロノミーが味わえるお店も多数紹介しています。
※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。この記事の情報は、本書の発売時のものになります。






