構造改革を経て多くの日本企業が過去最高益を記録している。とはいえ、未来に目を向ければ「持続的成長の実現」は依然として大きな課題だ。そして、持続的成長を可能にする鍵は、時代を先取りして自らが変革し続けることができるかどうか、すなわち組織の「自己変革力」である。経営の最前線で果敢に挑み続ける経営トップとの対談を通じ、持続的成長に向けて日本企業に求められる経営アジェンダと変革の秘訣を解き明かす。
連載第7回は、連載5、6回にご登場いただいた三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長に続き、同社の常務執行役員である田中良治氏に「KAITEKI経営」が持つメッセージとその実践について聞く。
「KAITEKI経営」との出会い
松江 御社の目指す「KAITEKI」というコンセプトについて、前回小林会長のお話を伺ってまいりました。「KAITEKI」のエヴァンジェリスト(伝道師)とも言われる田中さんですが、「KAITEKI」というコンセプトとの関わりの始まりはいかがだったのでしょうか?
三菱ケミカルホールディングス常務執行役員。2013年4月より、経営戦略室長兼グループ基盤強化室(エリア戦略、マーケティング、自動車関連事業推進)担当。
田中 私自身が「KAITEKI」に関わるようになったのは、2010年に三菱レイヨンが三菱ケミカルホールディングスグループに入った頃からです。当時、三菱レイヨンで経営企画室長だったこともあり、それ以来「KAITEKI」に関わっています。
実は、最初にMOSと聞いたときは、意味がよくわかりませんでした(笑)。三菱レイヨンの従来の経営スタンスにはなかったものだったので。
地球快適化インスティテュート(The KAITEKI Institute以下、TKI)で、30年、50年先のことを調査・研究しているといわれたときは、利益を追求する民間企業として50年先の社会を予測することにどのような意味があるのか、と思いました。個人的には未来学は大事だと思っていましたし、興味のある分野ではありましたが。
だから、「KAITEKI」というコンセプト、MOSという経営手法、TKIという組織が経営を貫く哲学で体系化されていることを知ったときには、相当驚きました。
松江 衝撃だったのですね。
田中 ええ。そうですね。それからはすっかり「KAITEKI」のエヴァンジェリスト(伝道者)です(笑)