4月1日、北越紀州製紙と三菱製紙の販売子会社同士の合併話が白紙に戻った。両社の本体統合への足掛かりといわれたこの合併にストップをかけたのは三菱だとされるが、その裏に大王製紙の影がちらつく。水面下で、北越と大王による三菱争奪戦が始まっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

「エープリルフールの冗談かな、なんて思ったけどね」。4月1日、製紙業界6位の三菱製紙から同5位の北越紀州製紙に、昨年8月に結んだ販売子会社同士の合併協議の合意を解除する通知が届けられた。

 子会社同士の合併破談といっても、決して小さな話ではない。王子ホールディングス、日本製紙に次ぐ「第三極」を目指すための「本体統合への足掛かりだと誰もが思っていた」(業界関係者)だけに、業界の勢力図を描き直さざるを得なくなるからだ。

 にもかかわらず、ある北越幹部の冒頭の言葉に代表されるように、北越側は事の成り行きを達観した様子で受け止めていた。実は北越はこの4カ月間、奇妙奇天烈な戦いの渦に巻き込まれ、もはや驚くようなことは何一つ残されていなかったのだ。

 その戦いとは何だったのか──。ずばり、大王製紙との三菱争奪戦である。北越の説明によると、今回の件は三菱側が昨年12月、販売子会社の合併に関する協議の一時中断を一方的に求めてきたことに始まる。その理由こそ明言されていないが、なんと大王による“横恋慕”が心変わりの根底にあるというのだ。

 ここから先は、当事者の言い分が大きく異なる。