大王製紙の数々の疑惑解明には時間がかかりそうだ(大王製紙の主力工場である三島工場)

 巨額の追徴課税疑惑、インサイダー取引疑惑、不正会計疑惑と数々の問題が浮上している大王製紙。今度は、筆頭株主である北越紀州製紙にも相談せずに、創業家一族関係者らがひそかに自社株式の買い増しに動いていることが、週刊ダイヤモンドの調べでわかった。「疑惑を追及している北越紀州製紙に対抗する狙いがあるのでは」(製紙業界関係者)との見方もあり、新たな火種となりそうだ。

 大王製紙株式を取得したのは大王海運という名前の会社で今年1月以降、発行済み株式総数の1.3%を約10億円で取得した。社名に「大王」と付くが子会社ではなく、「大王製紙会長を務めた井川俊高特別顧問が実質的なオーナー」(証券業界関係者)だという。

 この比率自体はたいしたことがないように見えるが、全体像は違う。実は創業家一族の持ち株比率は合計で19.4%にまで上っているもようで、筆頭株主である北越紀州製紙の19.6%に肉薄する。

 内訳を見ると、創業家一族が巧みに株式を保有している実態がうかがえる。

 例えば、愛媛製紙4.1%、カミ商事3.6%、兵庫パルプ工業2.1%、兵庫製紙1.8%などと関連会社が分散して大王製紙株を保有し、創業家一族がこれらのすべての会社の幹部に就いている。その他、大王製紙取引先持株会や、創業家10人強の持ち株も合計すると19.4%に上る。

株主提案は見送りに

 今回の株式買い増しに、北越紀州製紙は困惑の度を深めている。

 もともと、業界再編に色気を示していた北越紀州製紙が大王製紙の株式を引き受けたのは、偶然もあった。特別背任事件で会長だった井川意高氏が会社を追われた際、その父親の井川高雄顧問と大王製紙との関係がこじれ、昨年、「両者から仲裁を請われる形で株式を引き取った」(北越紀州製紙幹部)からだ。