スマントラ・ゴシャールは、クリストファー・バートレットと共同で行なった多国籍企業の行動原理に関する先駆的研究と、富の源泉としてのマネジメントの探究によって名声を獲得し、当代最も尊敬されるマネジメント思想家の1人となった。
引っ張りだこのコンサルタントであり、教師、講演者、多忙な著作家である彼の研究は、現代のグローバル化時代における企業の変革プロセスの指南役として、これからも重要な役割を果たし続けるであろう。
人生と業績
スマントラ・ゴシャールは1946年にインドで生まれた。物理学の学位を取得した後、12年間(1969―81年)インド国営石油会社に勤めた。組織の行動原理を知りたいという彼の欲求は、2つの博士号取得という形で表われた。1つは厳密な科学的方法の雄マサチューセッツ工科大学(MIT)から、もう1つは事例研究や観察や実践に基づく、より実際的な手法のハーバード大学からだ。
MITとINSEAD(欧州経営大学院)で講師を務めた後、1992年にINSEADの経営政策論の教授になり、1994年にはロンドン大学ビジネススクールの戦略的リーダーシップ論の教授になった。
彼は、1989年に発表したクリストファー・バートレットとの共著『地球市場時代の企業戦略・トランスナショナル・マネジメントの構築』(Managing Across Borders)で国際的に有名になった。
クリストファー・バートレットはハーバードビジネススクールの経営管理学のトーマス・D・ キャサリー・ジュニア記念教授である。ハーバードで教鞭を執る前は、オーストラリアのアルコアでマーケティングマネジャーを務め、マッキンゼーのロンドン事務所では経営コンサルタント、バクスターラボラトリーズのフランス子会社ではジェネラルマネジャーとして働いた経歴を持つ。
彼の研究の関心は、多国籍企業経営においてマネジャーが直面する戦略上および組織上の課題に集中している。その関心はベストセラーとなった彼の著作に反映されている。
『地球市場時代の企業戦略―トランスナショナル・マネジメントの構築』(Managing Across Borders)は、「フィナンシャルタイムズ」紙に20世紀で最も影響の大きいビジネス書ベスト50冊にも選ばれた。
思想のポイント
●トランスナショナル経営
ゴシャールとバートレットの思想は、2つの基本的な疑問に端を発している。