SNSより安全に「承認欲求」を満たしてくれる?AIの進化がもたらす“未来のコミュニケーション”の形写真はイメージです Photo:PIXTA

「ウェルビーイング」は、1948年の世界保険機関(WHO)設立の際に考案された憲章で、初めて使われた言葉だ。「幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態」をいう。新しい幸せの形として用いられ、最近さまざまな場面で耳にすることが多くなった。『ウェルビーイングの新潮流』第28回では、AIが「パーソナルエージェント」になる世界を予測します。

AIが日常生活に深く入り込み
「パーソナルエージェント」になったら…

 近年、生成AIの進化によって「パーソナルエージェント」という概念が現実味を帯びています。これは単なるチャットボットではなく、個人の価値観、過去の行動、感情傾向、興味関心などを理解し、継続的に人に寄り添う存在になり得ます。

 もしこのようなAIが日常生活に深く入り込んだ場合、人間のコミュニケーション構造そのものが変化する可能性があります。その中でも特に注目すべきなのが、承認欲求の行き先です。

 これまでSNSは、人々が他者から認められる感覚を得るための重要な空間でした。しかしAIがどんなテーマでも24時間常に応答し、自分が否定されることなく肯定的なフィードバックを返す存在になったとき、人はあえて炎上リスクを伴う公開空間であるSNSに向かう必要がなくなるのではないかという仮説が生まれています。

 SNSが急速に普及した背景には、スマートフォンの普及以上に「可視化された承認」の力がありました。投稿に対するいいね数やコメントは、自分の存在が社会に受け入れられている証拠のように感じられます。これは脳の報酬系を刺激し、その満足感を得るために人々はSNSを繰り返し利用するようになりました。

 しかし同時に、承認という他者評価は常に不安定さが付きまといます。反応が少なければ自己否定につながり、予想外の批判を受ければ心理的ダメージを受けます。つまりSNSは承認を与える装置であると同時に、苦しみや不安を生み出す装置でもあります。