私がなぜエクセルセミナーに絞って週末起業を始めたのか、説明します。まず、どんな週末企業をしようかと考えたときに、私には3つの判断基準がありました。
(1) 自分の強みを活かせるか
私は投資銀行の経験が長かったものですから、まずはその投資銀行経験を活かしたいな、と思いました。そこで、私が投資銀行でやってきた業務のうち、世の中にあまり知られていないものはなんだろうと考えました。
投資銀行といえば、ファイナンス理論を活用した企業価値評価をすることが主な仕事です……でも、こんなマニアックな知識に関心のある人はいるだろうか? または、外資系投資銀行は「給料が高い」「すぐクビになる」といった噂もあります。この真実について話すというのはどうだろう?でも、その話のためにお金を払う人はいるだろうか…?なんて具合に、1つずつチェックしていきました。
(2)自分の強みを求めている人が多くいるか
次に、今度はこの中から、一番多くの人が求めているのは何か?と考えました。当たり前の話ですが、求めている人が多いか、つまり需要という課題はとても重要です。狙う市場を間違えると、その後の成長余地も限られてきます。どうしても大きい市場は競争も激しいのですが、だからといって安易にニッチ市場に逃げてもいけません。需要が大きく、かつ、未開拓の市場はどこか……。
ずーーっと考えた結果、エクセルでいこうと決めました。エクセルというのは、何かと苦手意識を持っている人が多いにもかかわらず、それでも仕事で使わなければいけない人が多いので、きっとそこに自分の強みを活かせるのではないかと思ったわけです。
自分の経験上、エクセルのスキルを伸ばすためには、とにかく自分で手を動かし、自信をもつことが大切なので、まずはセミナーという形で、実際に参加者のみなさんとエクセルの手を動かす場を作ることから始めた次第です。
(3)競合が出にくいか
実は、エクセルを教える際に、いきなり本を書いたりせずにセミナーという形式を取ろうと思った理由がもう一つありました。競合が出にくいと思ったからです。
投資銀行という世界は、年がら年中エクセルを使う仕事をしているわけですから、当然エクセルのスピードもとんでもなく速いです。私よりもエクセルを使いこなせる人なんてたくさんいます。そのため、もし私が本を出すといったことで先んじても、すぐに真似できる人はたくさんいると思いました。
ところが、セミナーの場合は、エクセルのスキル面も大事ですが、同じくらい大事なのが「伝える力」ですね。セミナーはライブですから、目の前にいる参加者に「おお!なるほど、こうやればキレイなエクセルが作れるのか!」と、感動してもらわなければいけません。
これは私の個人的な感想ですが、投資銀行の人たちは、大勢の人の前で話すことに慣れていない、あるいは、そういうことが好きではない人が多い印象があります。PCの前で優れた計算をすることはできるのに。一方、私は人前で話すことが好きだったので、これは強みになるなと思いました。仮に私のセミナーがうまく行った場合、同じようにセミナーをやりたいと思う人は少ないだろうと。
ちなみに、私がセミナーを開始してからは、とにかくたくさんのセミナーを開催しました。ある週末では、土曜日に1日大阪で6時間セミナー、その夜に名古屋に移動して、翌日午前中に4時間名古屋でセミナーを行い、新幹線に飛び乗り、その夜に東京で2時間セミナー、というスケジュールでしたが、これは普通のスケジュールでした。中には土曜日は台湾、すぐに帰国して日曜は大阪セミナーなんてこともありました。
これだけの数のセミナーをこなせるのは……やはり、人前で話すのが好きなんでしょうね。こればっかりは生まれつきの性格だなと、つくづく感じます。性格も強みの一つですよね。
やはり、新しいビジネスを開拓する際には、誰にも真似できない強みを活かさなければいかないだろうと思うのです。