――では一方で、円安・ウォン高は、なぜ起きたのでしょうか。

 これには、2つの方向性があります。日本ではデフレからの脱却を目指して大胆な金融緩和を推し進めるアベノミクスが始まり、円安が加速しました。

 他方韓国では、この数年間、経常黒字の拡大を背景にウォン高が進展しました。経常黒字は投資が貯蓄を大幅に下回った結果であり、「不況型黒字」の性格が強いものです。足もとでは比較的落ち着いていますが、一時は1ドル=1000ウォン近い水準までウォン高が進みました。

 この結果、ウォンは円に対してかなり高くなってしまった。日本の場合は昨今の円安が企業業績にプラスに作用しましたが、韓国の場合はウォン高が企業業績にマイナスに働いたのです。

従来の「韓国型成長モデル」に代わる
新しい成長モデルが構築されていない

――チャイナショックと円安・ウォン高の影響は、それほど大きかったということなのですね。

 ただ、従来の成長モデルは好調な世界経済の上に成り立っていたので、外部環境が悪化すれば、成長が減速するのは避けられないものです。その意味では、近年の経済低迷は十分に予測されていたものでした。経済が低迷しているもう1つの原因は、従来の成長モデルに代わる新しいモデルが、まだ構築されていないということです。

――現在、政府は新しい成長モデルを模索するために、どんな対策を行っているのですか。

 2013年2月に就任した朴槿恵大統領は、国民の幸福を実現するため、「創造経済」の実現と経済民主化の推進を目標に掲げました。従来のキャッチアップ型に代わるイノベーションにもとづく成長、財閥主導に代わる大企業と中小企業との共生を図っていくという考え方です。同年6月に発表されたアクションプランには、ベンチャー企業の創出、創造的な技術・アイデアを生み出す環境の醸成、情報科学技術と伝統的技術との融合促進などが盛り込まれました。

 その具体的な計画が、2014年2月末に「経済革新3ヵ年計画」として策定されました。これが朴政権の中期経済計画となり、昨年半ばからこれを踏まえて色々な施策が始まっています。とくに注目されるのが「創造経済革新センター」の設置で、今年上期までに主要17都市に設けられる予定です。ここでは、地方自治体、大学、政府系研究機関、金融機関などが連携して、ベンチャー企業の育成と成長促進を図って行きます。財閥系企業がメンターの役割を担います。

 ただ、成果が出るまでには相応の時間がかかるため、足もとでは政策の重点が景気対策に移っています。現在その指揮を執っているのが、経済担当副首相で企画財政部長官でもあるチェ・ギョンファン氏です。これまで行われた政策は、公共支出の拡大、不動産融資規制の実質的な緩和、経済の刺激に重点を置いた税制改正、景気に配慮した2015年予算の策定などです。韓国銀行も政府の政策に歩調を合わせて、昨年から3回利下げを実施しています。