かつてのソ連に見る
覇権国家没落の例

 ソ連はかつて、「共産主義陣営」の「覇権国家」だった。しかし、1980年代後半、ソ連経済は深刻な経済危機に陥った。そして、ゴルバチョフの「ソフト路線」もあり、支配下にあった東欧諸国は、もはやソ連を恐れなくなった。

 その時、何が起こったのか?89年、東西ドイツを隔てていた「ベルリンの壁」が崩壊。続いて、東欧で「民主革命」がドミノ式に起こった。そして、ソ連は「覇権国家」としての地位を失った。そればかりでなく、15の国々に分裂してしまった。これは、他国が言うことを聞かなくなり、覇権国が没落した分かりやすい例である。

 このことを踏まえて「AIIB事件」について考えてみよう。米国は、同盟国群に、「中国が主導するAIIBに参加しないよう」要請(命令)していた。ところが、英国は3月12日、G7諸国ではじめて参加を表明。これに、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、ルクセンブルグ、オーストラリア、韓国などが続いた。

 これらの国々は、「米国の言うことを聞かなかった」。つまり、米国の覇権(支配)を拒否したのだ。これは、「米国が覇権を喪失した象徴的事件」として、歴史に記憶されるはずである。

 そして、米国の要求を無視した国々は、逆に中国の言うことを聞いた。今回の一件だけで「中国が覇権国家になった」と考えるのは早計過ぎる。しかし、「覇権に一歩近づいた」とは言えるだろう。

 では、同盟国たちは、なぜ米国を裏切ったのだろうか?理由は、二つ考えられる。一つは、「AIIBに入ったほうが儲かりそうだ」と判断した。二つ目は、「逆らっても、オバマ米国は何もできないだろう」と判断した。

 特に理由二つ目は、「ソ連末期の状況に非常によく似ている」といえる。

 では、「AIIB事件後」、中国は一直線で「覇権国家」になれるのだろうか?米国は、このまま衰退しつづけ、中国に覇権を「禅譲」するのだろうか?

 もちろん、米国は、黙って覇権を譲ったりしないだろう。江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜、ソ連最初で最後の大統領ゴルバチョフのように、覇権を放り出した例も歴史にはある。しかし、米国は、まだそこまで落ちぶれてはいない。

 米国は、どうやって中国に逆襲するのか?おそらく、「AIIB後」の戦略は、「現在検討中」だろう。たとえ、もう出来上がっていたとしても、公開されるとは考えにくい。

 では、我々は米国が今後どう動くか知ることはできないのだろうか?そうでもない。米国の過去の行動を知ることで、ある程度未来の動きを予測できる。