中国が計画する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に、40ヵ国以上が参加を表明している。2014年10月に北京でAIIB設立の覚書が調印された時、参加を表明した21ヵ国に、米国の主要な同盟国はいなかった。だが、AIIBの仕組み作りに関わる「創設メンバー」の申請期限である3月31日を前に、雪崩を打ったようにさまざまな国が参加へと方針転換した。
「40ヵ国以上がAIIB参加」の
流れを生み出した英国
この流れを生み出したのは3月11日に参加表明した「英国」である。英国に続いてフランス、ドイツ、イタリア、そして韓国、オーストラリアという米国の同盟国が相次いで参加表明し、トルコ、ブラジル、エジプト、そして台湾など投資を受ける側となる国々の参加も決まった。英国にAIIBが入ることで、中国の言いなりにならなくてすむ度合いが高まったからだという指摘がある(英紙FT記事“Aso remarks show Japan dilemma over China-led bank”)。「英国は中国に屈した」という見方が広がっているが、一方で、「英国は、中国に恩を売った」というのも、あながち的外れとはいえない(英紙FT記事“How David Cameron lost, and then won, China”)。
英国は「中国に透明度の高い投資をさせるためには、AIIBに入らず外から批判するのではダメで、創設時から加盟し、内側から監督し、経営を改善していく必要がある」と、AIIB加盟の正当性を主張している(英紙FT記事“’Accommodating’ Beijing may be no bad thing”)。現在の英国に、その力量があるかはわからない。だが、少なくともいえることは、英国にはさまざまな「成り上がりの新興国」と長年対峙してきた、高い「経験値」があることだ。
ロシア、中東、南米、アフリカ、そして米国
「成り上がりの新興国」と付き合ってきた英国の経験値
端的な事例は、エネルギーを巡ってロシアと100年以上に渡って対峙してきた経験だ。この連載では「英露関係」について何度か論じてきた。英国は、英国亡命中の反プーチン派リトビネンコ氏急死事件について、さまざまなリソースを利用しての巧みな外交術で、ロシアと対等に渡り合った(前連載第10回、前連載第59回)。