錦織圭が、またもや朗報をもたらしてくれた。スペインで行われたバルセロナ・オープン決勝でパブロ・アンドゥハール(スペイン)を6-4、6-4のストレートで下し優勝。同大会の連覇を達成した。
この優勝は2月のメンフィス・オープンに続いて今季2度目。また、ATP(男子プロテニス協会)ツアーでの優勝は9度目となり、これは女子のクルム伊達公子が持っていた8度を抜き日本人最多記録を更新したことになる。
こうした記録面での快挙とは別に、この優勝には大きな意味がある。それはクレーコートでの大会を連覇し、錦織がその戦い方を手の内に入れたことだ。
勝敗を大きく左右する
サーフェスの基礎知識
テニスコートの表面の材質をサーフェスというが、サーフェスによってワンバウンドしたボールのスピードの落ち方や跳ね方が異なる。選手のプレースタイルによって有利不利、得手不得手があるのだ。
サーフェスについては、テニス経験者やATPツアーを熱心に観ている人は先刻ご承知で「何を今さら」と言われそうだが、詳しくない人には今後の錦織のプレーを観るうえでは欠かせないポイントなので、簡単に紹介しておこう。
ATPツアーの大会で使われるサーフェスは3種類。ハード、クレー、グラス(芝)で、その特性にはこんな違いがある。
●ハードコート
セメントやアスファルトを基礎にし、その表面を合成樹脂などでコーティングしている。コーティングの材質によっても固め、柔らかめの違いはあるが、総じて固いため、ワンバウンド後の球速はあまり落ちず、ボールが高く跳ねる傾向がある。また、ボールがイレギュラーバウンドしないのも特徴。速いサービスやストロークなどスピードを持ち味とする選手に有利だ。シューズのグリップが良いため、選手の体に与える負担は大きく、タフであることも求められる。4大大会(グランドスラム)では全豪オープンと全米オープンで採用されている。
●クレーコート
クレーとは土のこと。土を固めた基礎のうえにさまざまな材質の砂を敷いたサーフェス。ATPツアーではアンツーカー(高温で焼いたレンガなどを粉砕した赤土)を使ったレッドクレーを採用している大会が多い。土がボールの勢いを吸収するため、バウンド後は球速が落ちると同時に高く弾む。そのため高速サーブもリターンしやすくなる。また、イレギュラーバウンドも多い。ラリーが長くなる傾向もあり、ストロークが正確で緻密な組み立てができる選手に有利。また、足がスライドするため、特有のフットワークが必要になる。4大大会では全仏オープンで採用されている。