シェフとマネジメントの仕事の両立
――現在はエグゼクティブ・コーポレート・シェフとして、他のNOBUのマネジメントもなさっていますね。
マイアミに行ってからバハマやダラスをオープンしましたし、ポップアップ(期間限定営業)や多くのケータリング・イベントにも関わります。ポップアップに携わったモンテカルロでは、その後、NOBUの実店舗がオープンしました。ベネズエラやスウェーデン、昨年のブラジル・ワールドカップのためにも2日ほどのケータリング・イベントを行いました。
2013年に初めてのNOBUホテルがラスベガスのシーザーズ・パレスにできた時には、ノブさんと相談しながらホテル内でのレストランのオープンに携わりました。マニラにもつい最近、NOBUホテルがオープンしましたし、サウジアラビアのリヤドも間もなくだと思います。今はマイアミのNOBUホテルにレストランを移転するため、準備中です。
――世界中でホテルとレストランを次々にオープンさせながら、シェフとしての仕事もされているのは超人的ですね。どうしてそんなことができるのでしょう?
何でも深刻に考えすぎないこと、頭の中で物事を区切って箱に入れることかな。たとえばラスベガスでは既にシーザーズ・パレスという巨大ホテルがある中に、ホテルとレストランをオープンするため、シーザーズ・パレス側の予算や様々な規則の制約がありました。キッチンの什器、デザインなど、こちらの要求がそのまま通らないこともあります。お金の問題は最初にぶつかる壁です。それから必要なものを注文してフロアの配置を計画し、人材を集め、トレーニングし、シミュレーションし、オープンに至るわけですが、その間にも数え切れないほど問題は起きますから、深刻に考えていたらパニックになってしまいます。一生懸命やるけど深刻に考えすぎないことで、変化に対応できます。
また、一つのレストランのオープン準備をしている最中に別のレストランから相談があるとメールが入ったとします。そんな時には両方のことを考えようとしないで、「このメールには明日返信しよう」と頭の中で別の箱に入れてその日は忘れてしまいます。
こうして仕事の中でマネジメントを学んできました。今はキッチンに立って料理をすることが、マネジメントのスイッチをオフにする、切り替えのための時間になっています。