世界の食料問題、そしてエネルギー問題を解決する可能性を秘める「ミドリムシ」の人工培養に、世界で初めて成功したバイオベンチャー・ユーグレナ。そのユーグレナの代表取締役社長、出雲充がそのIPOの祝杯を上げたレストランに、ひとりの料理人がいた。その男の名前は松久信幸。彼が世界で展開するレストラン「NOBU」には、その味を求めて各国のセレブが足繁く通う。ロバート・デ・ニーロとニューヨーク、トライベッカに「NOBUニューヨーク」、ジョルジオ・アルマーニとイタリア・ミラノに「NOBUミラノ」を経営する、まさに“世界のノブ”だ。
世界の「ノブ」と、世界初のミドリムシベンチャー「ユーグレナ」。松久信幸による新著『お客さんの笑顔が、僕のすべて!――世界でもっとも有名な日本人オーナーシェフ、NOBUの情熱と哲学』の発売を機に、包丁一本の料理人と、試験管一本の研究者が語り合った。(取材・構成:森旭彦)
何があっても諦めずに追いかけていれば……
出雲 今日はお会いできて大変嬉しく思っています。著書を拝読していまして、前半は波乱万丈の自伝として、後半はまるでビジネススクールのケースのような生きたマネジメント論として、感銘を受けました。先生はミドリムシ、
そして私たちユーグレナのことをどのようにしてお知りになったんですか?
松久 僕は時差のある出張が多いので、体調管理のためにサプリメントを三種ほど、10年来愛用しています。ミドリムシは、箱根の「強羅花壇」という旧知の旅館を訪ねた時、女将の藤本さんに勧められたのが出会いでした。もう飲み始めて約3年です。おかげで胃腸の調子がずいぶんよくなりました。
今回こうして本を書かせていただいたことがきっかけで、出雲さんにお会いできて嬉しいです。
出雲 私も先生にはお会いしたかったんです。2013年の3月、ユーグレナのIPOのお祝い会をここ、NOBU TOKYOで開いていただいて、数々の料理に感動しました。それが縁で今回は著書を拝読し、こうして「世界のノブ」にお会いする機会をいただきました。
松久 僕も出雲さんの著書を拝読しています。
僕は好きで料理の世界に入って、料理ばかりをずっと追いかけてきました。出雲さんも、人生で何があってもずっとミドリムシを追いかけてきた。そこに強い接点を感じて、感動しました。
僕は、追いかけるものに対して決して諦めないタイプです。いろんな壁にぶち当たり、途方に暮れたこともありましたが、その時は必ず周りの人が助けてくれた。出雲さんの本を読んで、そんなことを思い出していました。出雲さんも、本当にミドリムシ一本ですよね?
出雲 そうですね、もう変われないですね。
松久 もし自分と似たところを見つけるのならば、そういうところが僕と出雲さんの共通点なのかな。