やがてH君は、せっかく希望に燃えて入社したのに、こんな状態では自分が会社にいる意味がないし、キャリアアップにもならないと思いつめて、会社を辞めると言い出したのです。

 H君がカウンセリングルームにやってきたのは、上司からH君への「パフォーマンスを上げるためカウンセリングに行きなさい」という指示によるものでした。

 H君のように、新入社員が仕事や職場に適応できず、閉所恐怖症になって電車に乗れなくなったり、会社に行けなくなったりというケースはよくあります。

 学生時代に体育会で活躍していたようなスポーツマンでさえ、会社に入ったとたん、ストレスでそうなるケースもあります。そういう人は「なんで自分が。体力には自信があるのに……」と、学生時代と現在とのギャップに悩むのです。

 私が上司とH君の2人から聞いてわかったこと。それは、その部署に新入社員を教育する余裕がないことでした。そして、残念ながら新人のH君には上から指示された仕事をこなすビジネススキルもありませんでした。営業の場合、特に自分で仕事をおぼえていく側面が強いのですが、H君に関しては、教えられたことの半分くらいしかできないような状態でした。

 私は、最初はきちんと教育ができる、余裕のある部署でないとH君が立ち直るのは難しいと感じ、人事担当者にそうアドバイスしました。

 その後、運よく別の部門に欠員が出たために、H君はそのセクションに異動になりました。そこでしっかりとOJTを受けた結果、今、H君はその部署と仕事にとてもよく適応しています。

 このように、配置転換がよい結果をもたらすことはよくあります。そして、H君の場合のように、会社にとっても、本人にとってもプラスであることが少なくないのです。

 さらに、H君がビジネスの経験と知識を積めば、再び希望していた職種である営業としての力を試せるときが来るかもしれません。

CASE2:
営業マンだけを増やし続ける経営者

 IT企業のA社は、Y社長がオーナーの会社で、毎年順調に業績を伸ばし、規模も拡大していました。ところが、ある時点を境に売上げが伸びなくなりました。