ECB(欧州中央銀行)による国債買い入れ政策導入以降、ドイツ10年債利回りは低下を続け、一時0.1%を割り込んだ。ところが、4月末に急騰し、5月以降は損切りの売りも巻き込んで上げ幅を拡大させ、ECBによる国債買い入れ政策導入決定以前の水準まで上昇した。

 2013年4月に日本銀行が大規模な資産買い入れ政策を決定した後の翌5月、日本の10年債利回りが急騰したのと同様の動きが生じているように思われる。当時を振り返れば、日銀の政策を受けて進行した円安と株高が漠然と市場参加者の期待インフレ率を高め、債券売りが加速した。

 金利急騰前のドイツ市場でも、DAX(ドイツ株価指数)が急激に上昇し、好調な経済指標の発表などが加わる形で市場参加者の期待インフレ率を引き上げた。ECBの国債買い入れ政策が早期に終了するとの疑念も生じ、足元の金利上昇につながっている。

 13年の日本の場合、長期金利上昇によって株価指数やREIT(不動産投資信託)指数が大幅に下落した。そこに日銀による長期金利上昇抑制策も奏功する格好で、金利は低下した。

 今回のドイツのケースで注目されるのはユーロドルと原油の動きである。ドイツ10年債利回りの上昇に伴い、ユーロドルは大幅に上昇した。ドル下落に連動する形で、リバウンドの兆しを見せていた原油価格も上昇した。そして、原油価格上昇がまたドイツ10年債利回りを押し上げる流れとなっている。