たとえば、病院、大学、商業ビル、水道事業といったものを、府と市が二重に運営していることで、府立病院の近くに市立病院が建設されるといった非効率が発生する。また、りんくうゲートタワービル(府)と大阪WCT(市)の高さ設定を府と市が競い合うといった無駄な張り合いを止めさせることができる。一元化すれば、単純に管理コストを減らせるため、より効率的な運営が可能となる。

 また、大阪府が大阪全体を考えた成長戦略を考える際に、大阪市が抵抗するケースもある。たとえば、都心から少し離れた場所にある関西国際空港から特急鉄道を建設したいと考えたとしても、インフラ整備のための財源と権限の多くを握る大阪市からすれば、市内を通過するだけの鉄道にお金を出すことに賛成するはずがなく、もっと他のことにお金を使いたいと考えるのは当然のことである。その結果、大阪の高速道路や鉄道網は大阪市内で止まってしまい、都市圏を網羅する形に整備されていない。したがって、インフラ整備は大阪府に任せ、基礎自治体には住民サービスのみを担わせるというように、役割分担を見直すことは都市戦略を考える上で必要不可欠だ。

 さらに、人口267万人の政令指定都市は、基礎自治体としてあまりに人口が多すぎ、市長が住民サービスをチェックすることが難しい。教育を例に挙げると、大阪市内におおよそ300ある小学校を、1人の市長が全て把握するのは無理というものだ。1つの小学校で年1回トラブルが発生したと仮定しても、年中連日のようにどこかでトラブルが起きていることになる。

 鉄道・道路といった交通インフラ、携帯電話・インターネットといった通信技術がない時代に決められた日本の統治機構は、今見直されるべきときに来ている。人々の生活圏は格段に広くなっているから、広域行政は大きなエリアが担った方がいい。しかし一方で、小学校や病院は近くにあった方がいいという事情は変わらないから、住民サービスは小さな基礎自治体で担った方がいい。

 こうした統治機構改革の突破口を目指したのが、「大阪都構想」だと言えるだろう。

(注)今回の住民投票ではあくまで「大阪市を廃止し、5つの特別区に分割する」ことを問うだけで、大阪府を大阪都に名称変更するには、大阪府民を対象とした住民投票を実施することとなるが、そのためには新たな法整備が必要となる。

いいことばかりのはずはない!
「反対」を投じた70万5585人の民意

 大阪市を廃止することに対しては、当初から批判や反対意見も多かったのも、また事実である。ただし冒頭で述べたとおり、今回の住民投票では稀に見る僅差で反対が賛成を上回っている。つまり、反対票とほぼ同じ数の賛成票があったわけで、都構想が否決されたからと言って、賛成票を投じた住民の意見を振り返らなくていいというものではない。かくいう筆者も、大阪都構想そのものには少なからずメリットを感じていた者の1人だ。