経営 × 財務

有識者会議の座長が明かす
コーポレートガバナンス・コードに込めた理念
池尾和人・慶應義塾大学経済学部教授(上)

【第7回】 2015年5月27日
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 経営者はいくら頑張っても、コントロールできない市場環境などの変化によって望ましい結果を出せないことがあります。その場合でも、適正なプロセスを踏んで、最善を尽くした意思決定をした結果であれば、結果責任は問われるべきではないというビジネス・ジャッジメント・ルールに従って、経営者は評価されるべきです。

 ところが、社内出身者で固められた取締役会のメンバーが、「彼は最善を尽くした」と主張しても、社外の株主らに対して説得力はありません。中立性の高い複数の独立社外取締役の証言があってこそ、最善を尽くした意思決定であることが立証可能になります。つまり、コーポレートガバナンス体制は、正当に務めを果たしている経営者を保護する盾になってくれるのです。

 そうした体制に支えられた経営者は、過度に結果に拘束されて保守的になる必要がなくなります。後顧の憂いなく、健全な企業家精神、アニマルスピリットを発揮しやすくなるでしょう。今回、まとめたコーポレートガバナンス・コードでは、そうした「攻めのガバナンス」実現を目指すものであることを強調しています。

日本的な考えを反映した
日本のコーポレートガバナンス・コード

――コーポレートガバナンス・コードは世界各国でも定められていますが、日本版の特徴は、どのような点にあるのでしょう。

 日本はOECD加盟国であり、OECDのコーポレートガバナンス・コードの原則を尊重しています。しかし、コーポレートガバナンスのあり方は多様であり、日本の事情も反映されるべきです。今回まとめたガバナンス・コードでは、海外から輸入されたものを基本にした日本版ではなく、日本的な考え方をはっきりと謳った「日本のコーポレートガバナンス・コード」であるということを、強調しておきたいと思います。

 その特徴は二点あります。一点目は、あくまで会社の持続的発展と中長期的観点からの企業価値最大化を目指す、というフィロソフィーです。本来、企業経営は中長期的観点から行うべきものです。いつまでも成果が出ないのでは困りますが、短期的な成果を性急に求めることは適切ではありません。

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